ブラックバス関連

2009.11.29

中池の池干し

◆本日11/29(日)は関市の中池の池干し外来魚駆除でした.

 事前に市役所の方や地元の方々など,みなさんで十分に準備をしていたことや,参加者の岐阜・美濃生態系研究会のみなさん,河川研のみなさん等,経験豊富でなおかつお互いに見知った面々が阿吽で役割分担して作業できたおかげで,池の規模がかなり大きかったにも関わらず,これまでにないスムーズな流れで作業が進んで,かなり感動しました.素晴らしい!

 うちの研究室からは3年生のオトモ2人が手伝ってくれて,さらにMJ大からも3年生が3人助っ人に来てくれましたが,彼女らの働きも素晴らしくて,山となったバス・ギルをちゃんと計測してくれました.標準体長5cmを超えるサイズ以上のバス・ギルは約230kg捕れていたのですが,そのうちの111kg = オオクチバス618尾とブルーギル438尾(合計1056尾)分の体長データも得ることが出来ました.
 
 
Pb292553_2
↑計測中の様子.この写真は次々運ばれてくるバスギルのうちの一部です.100kg超の外来魚はこんなもんじゃないです.

体長5cm未満のブルーギルを中心としたトロ箱一杯の外来魚は,全体の重量を計測し,そのうちのバケツ一杯分の個体数を計数しました.
 
 トロ箱に入ったブルーギル当歳魚全体の重量(泥等含む)は65.5kg,そのうちバケツに取った5kg中の個体数は3027尾のブルーギルと4尾のオオクチバス当歳魚(SL約13cm)が含まれていたので,これらのデータと,上記の大型個体の推定個体数を合わせた全体の捕獲個体数を計算すると,

☆オオクチバス 1338尾 (最大は全長58cm,3.4kg)
☆ブルーギル 大912尾,小39643尾 (≒4万尾) (最大は全長22.5cm)
(バスギル全体で約300kg)

ということになります.池の規模の割には少なめですかね?

 他には放流起源の大型のコイとヘラブナが大量にいましたが,そちらは生かしておきたいという希望に配慮して輸送したために未計数.

 そして,在来の可能性がある魚類として捕獲されたのは……ナマズ3尾とフナsp.1尾のみ!

 予想されていたことではありますが,保護すべき在来魚がほとんどまったくおらず,外来種のみに完全占領されていたという状態です.しかし,池の上流の小水路にはオイカワ・ヌマムツ・メダカ等がいるので,もともと池に在来魚がいなかったのではなく,在来魚が全く生息できない状態にされていたといえるでしょう.

 救うべき在来種がいなかったために,作業が簡単だったという面もありますが,これで在来の小型魚が多数生息するように再生されてほしいものです.
 
 
◆ここしばらくは,他にも調査に行ったり,査読をしたり,原稿を書いたり…

11/19(木)は3限に微分積分の講義をして,その後は研究室のセミナー.

11/20(金)は1限に生物学の講義をして,その後にスジシマドジョウ小型種東海型の個体数推定のための調査.今回は教育学部のK先生と,K研でマドジョウの生活史を研究している4年生にも助っ人を頼んで,うちの4年生とボクと,合計4名の精鋭チームで定期調査地のドジョウ類を捕獲.スジ小型三百数十尾とマド・シマを含めて,400尾以上に蛍光マークを注射しました.これで後日再捕獲すれば,その地点の個体数が推定できるので,春に推定したのと今回の秋の結果を比較できるはず.

11/21(土)は家の水槽の水替え等.

11/22(日)は,友人達とカヤネズミ調査をする予定だったけれど,主要メンバーの奥さんや子供が風邪や水疱瘡とのことで中止…しかし,そのおかげで翌日の講演準備が完了.

11/23(月祝)は関市の中池の外来魚駆除にバス釣り人達からクレームがついたために,外来魚駆除の必要性を説明するための「勉強会」.ボクはそこで外来生物法についての説明をしたわけです.バス釣り人の意見は想定通りで,特に目新しいものは無し.結局身勝手な理屈なので,社会的に悪印象を与えるだけなのにね…

11/24(火)の午前中はMIE大の大学院生たちと野外調査をして,3限はネットワーク大学コンソーシアム岐阜「自治体と環境」で生物多様性についての講義.いろいろな講師のオムニバスは,出席していればそれだけで単位が取れることが多いので,やる気の無い受講生が多いということは学生から聞いていたけれど,本当にうざい学生の群れがいたので(マジメな子達も,もちろんいます),ちょっと辟易.ボクが個人で担当する科目なら,うるさい一群に学生証を出させて,チェックした上で即「不可」を言い渡すところですが,この講義については世話役の先生がいるので,我慢してなにもしませんでした.
 
 
Pb242545
↑調査中に見かけた淡水海綿.
 
 
11/25(水) 午前中は会議.午後も夕方に会議.その合間に原稿書き…

11/26(木) 3限は微分積分の講義.その後に研究室のセミナー.

11/27(金) 1限は生物学の講義.一連の講義の中盤の盛り上がりとなる遺伝子組換えの話をしたので,それなりに受けが良かったかな.午後は原稿書き…なのだけど,学生達と話をして現実逃避している時間多し…

11/28(土) 月末締め切りの原稿の草稿が完成したので共著者にメールで送りました.2000字程度なので,すぐに書けるといえば書けるのですが,いかに必要なエッセンスを適切にまとめるかで苦労しました…しかし,共著者の方が,どう思うか…

11/29(日) 上述の通り,中池の池干し.みなさんお疲れ様でした!

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2009.08.20

外来生物法

外来生物法が施行されてから,やっと下記のような報道が.
 
ブラックバス運んだ疑い 42歳男「彼女に見せようと」
 
 
 こういうのは現行犯じゃないと逮捕できないので,なかなか捕まらないのが腹立たしいですよね.
 
 これ以前にも別の事件として↓こんなのもありましたが,どうなったんでしょうね?
 
ヤフオクに生きたブラックバス 違法飼育の可能性
 
 

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2007.12.23

お言葉

いつぞや天皇陛下が琵琶湖でおこなわれた祭典の時に,ブルーギルをもらってきたのは自分であり,それが増えて多くの人が困っていることを心苦しく思う,という旨のことを発言されていたわけですが,それについてブラックバス釣りの人のウェブサイトなどで,

「陛下は,ブルーギルが問題であって,ブラックバスに問題がないことを認めた」

という噴飯ものの解釈をしていたのを見かけたことがありました.(釣り雑誌でも似たような珍釈はあったようですが・・・)

 まったくもう・・・次のお言葉をよく聞いていただきたいものです.

<天皇陛下のお誕生日に際しての記者会見の内容とこの1年のご動静>


 ま,こういうものがあっても,聞きたくない人の耳には届かず,届いたとしてもフィルターがかかるのかもしれませんが.

 環境問題に関係することを眺めていると,つくづく,人は信じたいものしか信じない,というのがよくわかります・・・

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2007.05.04

ニュース

とりあえず記事のURLを.

伊豆沼:ブラックバス駆除の仕掛け、人工産卵床50個壊される /宮城
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/miyagi/news/20070503ddlk04040179000c.html


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2006.12.04

犯罪行為

2ch


12/2に岐阜県山県市の伊自良湖で外来魚の駆除作業があったわけですが,事前にバス釣り人がブラックバス類を持ち出さないように期日はあまり広くは知らせないようにしていました.
 しかしながら,某巨大掲示板のスレッド(http://sports9.2ch.net/test/read.cgi/bass/1163946884/)において,このような書き込みがあったわけです.

 問題はいろいろあるわけですが,

■特定外来種の持ち出しは違法行為であり,それを教唆する犯罪行為であること

■山県市内の近隣住民や役所関係者の中,あるいは近辺に違法行為を勧める人物がいたということ

が問題であるわけです.

 こういうのを具体的に訴えて罰する方策が必要ですね.

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2005.06.30

読書

最近はブログに読書感想文を書いてないけど,何も読んでないわけではないんですよ.出張とかの時は本を読むチャンスなので「詭弁論理学」とかワトソンの「DNA  」とかおもしろいのも読みました.なかなかどちらも読み物として秀逸です.

bass_kujo
 また,先日秋田のバス駆除シンポにいったときに購入した「オオクチバス駆除最前線」(杉山秀樹著,無明舎出版)はバス駆除の現場の実践報告として重要な本です(左の写真).まだアマゾンにも出ていませんが,こういう本がありますよ,ということだけでも知らせておきたいと思います.


 それから,昨日生協書籍部で見つけた本で「外来水生生物事典」というのもありました.結構常識的な視点で書かれており,ブラックバスだけではなくさまざまな魚の水産放流,学校教育でのメダカやカエルなどの無配慮な放流など,そうした多くの「外来種問題」に目を向けさせようという点では良い内容ですね.全国の小学校に配布して先生方に読んでもらいたいです.
 ただし,この本の著者らはオオクチバス釣り場のゾーニング(自然水域の一部のみ釣り場として認める)をおこなって,その収益をそれ以外の地域の環境復元に使えば良いのではないかと主張していますので,この点にだけ思ったことを書きます.
 このアイデア,ごもっともな感じはするのですが,バス釣り業界で(バス駆除を含めた)環境保全に金を出したところってありましたっけ? バス釣りはウン百億円市場だとよく聞きますが,それならそのわずか1%程度でも(数億円?)環境復元のために寄付や助成金として業界が出していれば,今のような状況にはならなかったんではないのでしょうか? 希少種生息地でのバス駆除やその他諸々の環境復元にびた一文出してこなかった業界に(もし,お金を出している例を御存知の方がいたらお知らせ下さい.訂正しますので.)上記のようなものを望んでも,実際的にはありえないことでしょう.残念ながら.

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2004.01.19

アメリカへ行こう!

外来種としてのブラックバス問題については,いろいろ取り上げてきたのですが,日本国内でちまちまと世間に後ろ指さされながらブラックバスを釣るよりも,どうせなら本場アメリカに渡って思いっきりバス釣りを楽しみましょうよ!

 今のところ,ツアー料金はまだ高いようですが,海外の航空運賃は安くなる一方なので(H.I.Sなんかだと4万円くらいでUSAと往復できるし,外国の航空会社を使えばもっと安いのもあるみたい),客が増えれば安いツアーもできるんじゃないかな? つり人社とかも,国内で政治家相手にごしょごしょやるくらいなら,安く楽しくアメリカでバス釣りできるシステムを作りましょう! 是非!

 とりあえず,ググッて見つけたアメリカバス釣りツアー関連サイト

Access!海外バスフィッシング
空の旅~American Bass Fishing
GRANBASS Fishing Tour
Japanese Bassres Network

 あと,最近,一部で話題のこのblogの過去ログで,ブラックバス問題に関する部分へのリンクを記しておきます.決して,ぼく自身釣りがキライなわけでもなければ,ブラックバスそのものを憎んでいるわけでもないんですよ.在来の生物が生き続けられる環境を維持するために必要なこととして,日本国内でのバス釣りを批判しているのです.


「警告! ますます広がるブラックバス汚染」
「ブラックバスがいじめられるホントの理由」
「川と湖沼の侵略者 ブラックバス」


 「ブラックバスがいじめられる~」と「ブラックバス汚染」には,コメントが付いて多少議論が伸びてます.
 その他,関連するものとして,以下のサイトを記しておきます.

ゼゼラノート
 1/15にこちらの書評(というより読書感想文ですけどね)を紹介したサイト.あちらで「ダブルスタンダード」と書かれてしまいましたが,ゼゼラ氏の「ブラックバスがいじめられる~」は中立的立場で論じるとしておきながら,一方に肩入れした内容であるから,その部分を批判したのであり,ぼくの感想文は,バス駆除肯定の立場から読んだ感想を記しただけで,最初から明らかに一方に荷担しております.

2chスレ 【過疎】バス害魚論 10匹目【マターリ】
 このスレの558以降が,ゼゼラノートでこのblogが紹介されて以降のもの.

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2003.12.22

コクチバス繁殖抑制マニュアル

「湖沼におけるコクチバス繁殖抑制マニュアル」
片野修(2003)魚類学雑誌 vol. 50 No. 2 pp.176-179.

 日本魚類学会の和文誌に掲載されていたトピックス.これまでのコクチバスの生態的特性と,繁殖抑制技術・個体群管理技術の開発に関する概略と,その成果としての「コクチバス繁殖抑制マニュアル」(もちろんオオクチバスにも応用可能)が記されている.

 マニュアルといっても,実践によって改訂されていくべきものと思うのだが,漠然と「とにかく数を減らす」というだけの精神で戦いを挑んでも,なかなか労力の割りに成果が挙がらないかもしれないし,より良い攻略法を作っていくための第一歩だろう.広報ないすいめんとかにも掲載されているようだが,PDF版や印刷版の配布(もうしてるのかな?)や,外来魚対策相談窓口のようなものを作って,より広く情報を提供し,また実践結果を集積して改訂,今後の戦略の展開へと生かすシステムが作られればなお良いだろう.

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2003.12.17

ブラックバス汚染

「警告! ますます広がるブラックバス汚染」 秋月岩魚・半沢裕子著 宝島社271pp.


 先に読んだ「ブラックバスがいじめられるホントの理由」があまりにもちょっとアレな内容だったので,口直しに読んだのだが,ぼく自身が感じていることと極めて相通じるものがあってうれしくなった.

 なんといっても,導入部でバス擁護論の問題点をさらりと書いて批判しているのだが,ぼくがこのウェブログで「ブラックバスがいじめられるホントの理由」の問題点として指摘した内容と,あまりにも一致するので,読んでて不思議な感じがして,妙におかしかった(笑).

 結局,秋月氏もぼくも,自然そのものに価値(=人間にとっての価値でもある)を見出し,尊重しようとする立場であることや,自分たちの快楽のためだけに貴重な資源であり歴史的価値のある在来生態系を破壊するバス釣り人を批判するとなれば同じことを主張することになるのだろう.

 とりあえず,内容的には,同じ著者の「ブラックバスがメダカを食う」(宝島社)の続編にあたるのだが,生物多様性条約批准に伴って,行政的にも,また世論も外来種NO!となりつつあることがレポートされていて,うれしく思える反面,なんとか巻き返しをはかろうと政治的に暗躍する日本釣振興会の姿が記されていて恐ろしくもある.

 また,バス釣り推進を熱心に進めるつり人社(社長が日釣振の理事でもある)の活動の問題点の指摘にも多くのページを費やしている.ぼく自身が,某埋め立て事業反対に関してつり人社に協力したこともあり,その辺の指摘は胸が痛い.なぜなら,そのときぼくが協力した人たちが,バス問題関連の討論会で野次を飛ばすなどのことをして,非道義的な行為をしているからでもある.

 彼らに悪気がないことは想像がつくし,つり人社の現社長も,決して,金の儲けのために自然を破壊したいと積極的に思っているわけではないことも知っている.しかし,考えが間違っていると思う.

 ぼくが,直接話した限りにおいては,バス釣りで多くの人の関心を水辺に向けたいと社長は言う.同じような主張を生態学琵琶湖賞を受賞した某陸水研究者の方が主張していたのも知っている.だが,何もいろいろな生物の絶滅リスクを挙げるバス釣りを手段に選ばなくてもいいじゃないか!

 そうした権力を持ち,政治的な働きかけに積極的な人たちが,さまざまな生き物がいることのすばらしさ,重要性を理解してくれない以上,まだまだ戦わざるを得ないのは,悲しい現実である.

 また,つり人社が環境保全運動を支援するがゆえに,その支援を受けた人がバス問題に対して沈黙してしまうことがあると,秋月氏は本書で指摘する.ぼくは,支援を受けたのではなく,協力した方だし,そのときも心の中で呉越同舟呉越同舟・・・とつぶやきながら行動していたくらいなので,決して手を組んだことがあるからといってバス問題について批判をためらったりはしない.

 支援を受けたために,沈黙しているのが誰なのか,ぼくは存じ上げないが,そうした人たちが,本気でブラックバスを日本に定着させたいと思うのでなければ,義理に背いてでも,正しいと思うことを発言し,行動して欲しい.

 少なくとも,日本からブラックバスを排斥しても,同じ種類の魚は米国で,本来彼らが属すべき生態系の中で生活し,スポーツフィッシングも堂々とおこなわれているのである.そのことに何の問題もないし,むしろ良いことである.

 しかし,日本にブラックバスをはびこらせて,絶滅した生物がいれば,それは二度と再び,どれだけ多くの人が願おうとも再生不可能なのである.絶滅=完全な消滅であり,取り返しのつかないことなのを,どうか少しでも多くの人に理解して欲しいと,あらためて感じるのである・・・・

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2003.12.15

ブラックバスがいじめられるホントの理由

「ブラックバスがいじめられるホントの理由」 青柳純著 つり人社 95pp.


 はっきり言って、読んでがっかりした本。

 副題が「環境学的視点から外来魚問題解決の糸口を探る」とあるが、内容を読んでみると、著者は自然にも生き物にもさほど関心が無く、「生物多様性」を尊重し、維持しようとする考えはなさそうである。基本的に、著者の重視するのは「金」であり、「利益」である。とってつけたように「生物多様性」についても考察しているが、著者にとって関心が無いこともあってか、吉野川の堰の工事問題についての住民意思についての考察文に根拠を置いて、あくまでも純粋な自然保護派は少数である、とすることで少数派の意思を積極的に無視して話を進めるようにしている。つまり、自分は大所高所から見下ろして、多数の人の経済的利益を考えてこの論文を書いたんだぞ、多数のためには少数のわがままなどどうでもいいのだ、という倣岸さが目に付く。そうした倣岸さの一方で、あとがきの最後ひねこびた文章があったりするので(世の中、金がすべてという考えの著者にとっては、あの文章は自然な発露だとは思うけど)、少なくとも、ぼくはこの著者を軽蔑せざるをえない。

 さて、一応、問題と思える内容で、目に付いたいくつかを記しておきたい。


■「第5章 既存の外来魚論の整理」

 この章では、これまでブラックバスを中心とした問題についてどのような主張がなされてきたかを書かれているのだが、秋月岩魚氏と中井克樹氏の主張に対しては、問題提起だけで何ら具体的な対策が提示されていないと切り捨てている。その一方で、日釣振を釣り人全体の代表としてそちらの主張には何も問題点を記していない。

 そもそも、外来魚、特にこの場合は犯罪的行為によって無秩序に放流され、在来生物の絶滅のリスクを増大させているブラックバス問題については、最初から多くの人に周知の内容だったわけではない。多様な生物の存在に価値があるということ自体に反対する人は少なく(総理府の世論調査で移入種対策を進めるべきと答えた人が過半数なのは、その根拠といえるだろう)、そうした人々に問題の存在をアピールすることは非常に重要なことであり、その結果として今の「ブラックバス問題」があるのだから、解決策が示されていないだけで無意味な主張のように記すのは、明らかにおかしいだろう。

 しかも、この本の出版されているつり人社は日釣振と極めて深い関係にあり、そちらをヨイショして一切批判を加えないのも、非常にコビていてイヤラシイ。そもそも、釣り愛好者にもさまざまな人がおり、多様な意思が存在しているはずなのに、なぜ、釣り人=日釣振と断ずることが出来るのか。こうした、多様な意思やマイノリティを無視した乱暴な一般化は、本書全体に蔓延している。


■「第2章 外来魚移入の経緯」

 ここで、少し前の章の話に戻ってみる。 順番に読んでいると、おや?と首を傾げながらも読み進んでしまうのだが、第5章や、それ以後の親バサーな論理を見た後で考えると、この「第2章」はその布石となっていたことに気づくだろう。

 つまり、この章では、秋月岩魚氏が著書「ブラックバスがメダカを食う」で主張した、ブラックバス類の密放流による拡散を、根拠の無いものとして否定し、琵琶湖産魚種が他地域の河川・湖沼に広がっていることを一生懸命主張している。

 秋月氏が密放流(特に釣り産業と結びついた確信犯的なもの)の存在を声高に主張す るのは、それが他の魚には見られない行為であり、具体的証拠をつかめないまでも、断固としてやめさせなければならない犯罪的行為だからである。琵琶湖にいないコクチバスが急速に多くの地域で発見されたり、琵琶湖内のオオクチバスにフロリダバスとの雑種が見出されている事実は、そうした行為が継続していることや、影響の大きさを示している。

 もちろん、琵琶湖産アユに付随してさまざまな魚種が拡散しているのは事実であり、そうした水産業の罪も批判しなければならないのだが、著者の青柳氏は、なんのために犯罪的行為の問題を矮小化しているのだろうか? こうやってあらかじめ釣り産業と結びついた犯罪的行為を、根拠が薄くて影響の少ないもののように印象付けておけば、その後の漁業者批判と釣り人(この場合はバサーだけのことを意味するはずなのに、なぜか釣り人全体として扱われている)による経済効果を正当化しやすくなるわけだが。


■「第6章 何が本当に問題か・対立の構造」

 さて、本書のメインらしき部分である。

 しかし、おかしな内容ばかりで、いちいち指摘するのもなんだかなぁ、という感じである。とりあえず、すべての問題を漁業者と釣り人の対立、というふうに単純化している。「生物多様性」は常にその両者と対立するように位置づけられている。

 なんだか奇妙である。まず、釣り人がすべてバス釣りを享受しているわけがない。漁業(水産業)は、これまでから外来魚の移植や放流をおこなっていたので、生物多様性を破壊しているから、釣り人を批判する権利が無いといっているが、近年は移植放流事業はおこなわれなくなりつつあり、在来の生態系を生かした漁業をおこなおうとするのはいけないのか?  そもそも、琵琶湖に関しては、琵琶湖総合開発でヨシ帯を破壊し、漁業的にもさまざまな魚種の移植放流を繰り返してきたのは事実である。しかし、そうした行為を反省し、ヨシ帯の再生や、琵琶湖固有の魚種の漁業を続けたいとすることが、そんなにおかしいだろうか? バス擁護論者は、すぐに「さんざん琵琶湖の環境を破壊しておいて今更ブラックバスを悪者にするな」と主張するが、古い価値観のもとに行った行為の埋め合わせをしようとしているのを、なぜ認められないのか? 琵琶湖を再生させたいと願い、さまざまな対策を取ろうとする一環の中に外来種対策もあるのではないのか?

 固有の生態系の維持、伝統的漁法の継承、水質浄化などなどといった政策の中で、ブラックバス問題だけが、際立って大きく取り上げられるのは確かにおかしい。しかし、それは、環境を犠牲にしてでも自分たちの道楽を優先したいというバサーと甘い汁を吸ってきた釣り業界が、頑強に政策に反対していることが原因である。

 また、琵琶湖固有の生物を守るための政策を取るにしても、現状では経済に直接絡まない生物種の存在を論拠に何かを行うことは難しい。だからこそ、固有魚種を対象にした伝統漁業を、琵琶湖固有の生態系を維持し、利用するシンボルとして用いているという面もあるだろう。その場合、生物多様性と漁業が対立しているわけではない。また、固有種を対象とした釣り(ホンモロコ釣りなど)を楽しみたいとする釣り人とも対立しない。現在対立しているのは、琵琶湖の環境や生態系を破壊したまま、自分たちだけ甘い汁を吸いたいバス釣り関連集団 vs.それ以外の人々である。

 琵琶湖以外の事例については、河口湖と中禅寺湖については、まあ、そんなにおかしなことは書かれていない。生物が少ないのが本来の姿なのに、そのことの価値が認められていないのを指摘しているのも、この本の中では数少ない良い部分である。霞ヶ浦についても、それほど問題の捉え方は悪くない。しかし、八郎湖の問題については、大半が埋め立てられて淡水化した湖なのだからバスの駆除をするのはおかしいという主張はいただけない。秋田には、秋田・山形あたりにしかいない固有の魚種(トミヨ属雄物型・ジュズカケハゼの一種)や、他地域で絶滅して、かろうじて東北地方で残存しているような魚種(シナイモツゴなど)がいる。そうした魚種は、止水域や流れのゆるい河川に生息し、そうした環境は多かれ少なかれ人為の影響を受けている。人為の影響がある生態系に守る価値が無いというなら、それらの魚種の絶滅もかまわないということか。八郎湖は大半が埋め立てられたとはいえ、その近辺に在来の魚種が生息しているであろうに、なぜそこでのバス・ギルの駆除を否定する必要があるのか?


 まだ、他にも文句を付けたい点は多々あるが、大きく目に付くのは以上のような部分だろうか。ちなみに、本書の最後のほうでは、今後の提案らしきものがある。そこでは、「完全駆除」も「ゾーニング」も非現実的であるとして、まず取り組むべきなのは限定的な水域で在来魚種の保護としている。その例として、京都の深泥池の外来種除去調査をあげているのだが‥‥

(゜д゜)ハァ?

 中井氏や秋月氏の論に対して具体的処方がないと見下した書き方をした著者の提案がそれですか?  何事も小規模な実践から始めるのは当然のことであり、その最終的な目標をどこにおくかを議論して提示しているのが完全駆除やゾーニング案だと思うのだが? 結局、著者は、将来的な方向性を示さず、目先のことだけしか見えていなかったということですか‥‥

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