勝手な読書感想文

2015.08.11

本を読む本

夏休みといえば,「読書」… なんていう人は,今どきあまりいないかもしれませんが,本屋に行くと○○フェアとかで文庫本なんかが平積みで広げてあるから,そういうのを見ると読書欲がそそられますよね.まぁ,そんなに読む時間は無いんですが.

 実際,今はものすごい大量の本が出版されていて,その中で個人が読める数などたかが知れているわけです.読むのが早い人ならまだしも,自分なんかは遅筆・遅読なので,ともすればすぐに情弱になりそうなんですけど,なにをやるのも遅いなりになんとか学者稼業が成り立っているという不思議(笑)

 それはともかく,このような無数に本がある中で少しでも効率よく良い本を探すためには,個人で片っ端から読むのではなく,仲間同士で本を紹介し合う方が効率が良い,ということで考案されたのが「ビブリオバトル」だったりします.

 ボク自身は普及委員会とかに入っているわけではないのですが,とりあえず大学に入学したばかりの新入生対象に開講される「初年次セミナー」を担当しているので,去年からビブリオバトルをやらせてみてますが,結構うまくいきます.今どきの子は本を読まない,みたいに言われてますが,まがりなりにも国立大学の学生ともなれば,本の一つや二つは紹介できるので,なかなか良いですね.

 さて,そんな感じで,今は「さまざまな本を知る」ということに需要があるのか,「本」や「読書」を主題とした小説やマンガ作品にもメジャーなものがでてきました.有名どころではテレビドラマにもなった「ビブリア古書堂の事件手帖」がありますし(余談ですが「薄暮のクロニクル」4巻に栞子さん(+大輔)が1コマだけ出てました),マンガだとモーニングに連載されていた「草子ブックガイド」とかあります.他にもボクが未読なものはいろいろあるようです.

 で,そういう中で,最近読んだのが山本弘さんの「BISビブリオバトル部」シリーズ.

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 内容的には,タイトル通り「ビブリオバトル部」の話.ノンフィクションなどいろいろなジャンルの本も扱われていますが,作者がSF,特撮のオタクの方なので,そっち方面の知識も大量に投入されてます.こういう本を読むと,そこで紹介されていた色々な本が読みたくなるので困りますね! 紹介されてた本の中で,今一番気になるのは「小説 仮面ライダークウガ」ですが(笑).(もちろん,もっとマジメな本も,たくさん,ちゃんと魅力的に紹介されてますよ)

 それと,本屋で見かけて買ったマンガの「バーナード嬢曰く。」

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 これも,すっごく好みの内容でした.主人公の町田さわ子(自称:バーナード嬢.実際は作中でそう呼ばれることはほとんどない)が,なるべく頭が良さそうに見える本を読んだことがあるように見せたがる話… のような感じなのだけど,周りのキャラとの掛け合いがおもしろい.そして,笑えるだけでなく,その中で各作品への鋭い考察が垣間見えて,非常に興味深かったです.

 個人的には,主人公のライバル?的なSFマニアの神林しおりが立てた『「難しいSF作品は書いた作者も理解していない」仮説』がツボでした(笑).自分が高校生の頃には,アーサー・C・クラークやジェームズ・P・ホーガンのハードSFを片っ端から読んだりしてましたが,よくわからないまま読んでた部分も多かったなぁ,という当時の感覚があるので,結構共感しました.(ただし,この本で難しい本の作者としてあがっているグレッグ・イーガンの邦訳は1999年くらいからなので,読んだことないです.クラークやホーガンなんか比べ物にならないほど難しいのかも)

 こういう本を読むと,古典,新作問わず広いジャンルの面白い本のことがわかるので,本当に良いですね.読んでなくても読んだような気になれるし!

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2015.01.18

「地域再生」はヒトの保全生態学…のような気がしなくもない

2014年は長良川おんぱくに今まで以上に関わったり,大学の公開講座で「地域再生」をテーマにした講義を引き受けたりしたので,ずいぶんと「地域科学部」の先生らしくなったものだなぁ,と我ながら思ったりします.

 こういう立場になったのには,やはり周りの影響があって,まちづくりなどに関わる先生方にいろいろと引っ張り込まれたりして,門前の小僧なりに学ぶところがあったのが大きいかもしれません.また,自然環境の保全を考える上で,それぞれの地域ごとのまちづくりが重要なのは自明ですから,地域再生に関わらせてもらえるというのは大変にありがたいことですし,チャンスは活かすべきだと思ってます.

 まあ,そういうことで,何も知らないわけにはいかないので,昨年は地域再生関係の本をいろいろ読んでみました.

『地域再生』 香坂玲 著.2012年.岩波ブックレット,79pp. 本体¥640円+税

『里山資本主義』 藻谷浩介・NHK広島取材班 著.2013年.角川oneテーマ21,308pp. 本体¥781円+税

『地域再生の罠』 久繁哲之介 著.2010年.ちくま新書,254pp. 本体¥780円+税

『地方消滅』 増田寛也 編著.2014年.中公新書,241pp. 本体¥820円+税


<その他,微妙に関係?する本>

『国盗り物語』(1~4巻) 司馬遼太郎 著.新潮文庫.

『のうりん』(1~9巻,以下続刊) 白鳥士郎 著,切符 イラスト.GA文庫.

『ぼくらはみんな河合荘』(1~6巻,以下続刊) 宮原るり 著. ヤングキング コミックス.

<その他>が歴史小説だったり,ラノベだったり,マンガだったりしますが,これはこれで頭の肥しになるのです.ちなみに「のうりん」はアニメ(1~4巻までの内容)を2回見たので,原作の1~4巻は1回しか読んでませんが,5~9巻は2回読みました.あと,コミック版とスピンオフの「のうりんプチ」と「のうりん-野生-」も持ってます.なんか,めっちゃお気に入りですね…


 さて,地域再生という言葉に関しては,昔は「まちづくり」と言われることが多かったような気がしますが,商店街などの「まち」だけでなく,山間地のような田舎も含めた社会の維持・再生を指しての言葉として近年よく使われるようになってきた感じがします.大学の公開講座で企画者の先生と話をしていて,「せっかくなので多少勉強してみたんですが,今「地域再生」って,すごく流行ってるんですね!」と言ったら,「すごく流行ってますよ.」と返されて,自分の見識の無さをあらためて認識しました(苦笑)

 実際に読んだ中では,『地域再生』は正直言っておもしろくなかったです.単なる事例集.たぶん,講義で使うテキストなんでしょう.『里山資本主義』はベストセラーだけあって読みやすいし,面白い本です.いろいろ考えさせられますね.過疎化が進むような「田舎」に多くの資源があり,それを活用することで経済至上主義の都市住民の資本主義とは違う,災害や経済危機に強い生活を保障するという基本的な考え方には,大いに共感できます.島根県のホンモロコ養殖も紹介されていますが,これはあまりよろしくないですけどね.

 『地域再生の罠』は,読んでみると結構面白いのですが,話の展開が強引かな.おそらく多くの経験をもとにして,その中の特徴的なところをわかりやすく抜き出して書いているのだろうけど,ちょっと乱暴な展開なので大した根拠が無いのに決めつけているように見える部分もあるかも.アマゾンのアンチなコメントはそういうところが引っかかったんでしょうね.ちなみに,岐阜市の街を衰退させる取り組みと市役所のヤル気の無さもけちょんけちょんに書かれてます.いや,まったくその通りかと(笑).

 『地方消滅』は,2014年に少しニュースになった人口減少による「消滅可能性都市」という予測についての根拠や,今後の日本の人口減少についての詳細を分析,対策を提言する本……ですが,「消滅可能性都市」を提唱した日本創成会議の報告書が半分で,残り半分は対談.報告書部分は背景知識が無いとちょっと読みにくいところもあるし,対策もピンとこない.分かる人には分かるんだと思う.しかし,この本は今後の日本の人口トレンドを知っておく上で必読でしょう.人口減少が起こる要因と,その規模を知らずに地域再生なんてありえないし,生物系の人たちの好きな「里山生態系の保全」もありえないですから.いくつか重要な論点はありますが,地方から東京に人口が集まることによって,地方の人口減少が進むとともに,首都圏に集まった若者が晩婚・未婚化して子どもを残さないので,日本全体の人口を集めて消滅させるブラックホール化しているというのは,考えてみたら当たり前の重要な事実.いずれ東京に吸収される地方の人口も減少しすぎて,東京の人口すら減少するという予測は,今のままの世の中だったら当然の帰結ですし.政府の少子化対策とか,いろいろ見当違いなのがよく分かります.

 こうした地域再生についての基礎知識を得るための本を読んだり,いろいろ関わったりして思ったのは,地域再生とかまちづくりって,結局「ヒト」という動物の地域個体群の保全生態学なんじゃね?? ってこと.

 生息環境の変化で移出の増加繁殖率の減少が生じ,その結果として全体的な個体数が減少しつつ,メタ個体群を構成する小さな生息地から順に消滅しているのが,現在とこれから数十年の日本の現状であって,これって保全生態学者が絶滅危惧種相手にみていることじゃないのかなぁ,と思うのですよ.

 そうすると,優れた保全生態学者(というものが存在するなら)は,すぐれた地域再生の担い手にもなりうるわけで,そして逆もまたしかりではないかと.問題は,今は保全生態学の人と地域再生の人は,お互い無関係に生きていることが多いということかな.強いて言えば,元滋賀県知事の嘉田さんが理想形に近かった唯一の例かも.

 とりあえず,社会学や地域再生の人たちは,基本的に自然のことも生態学のことも知らないし,関心も薄いので,両方をつなぐなら保全生態学の人が入り込むしかないし,それによって自然を活かして地域再生もすることができるようになれば…というのが,いろいろ勉強した感想.もっとぶっちゃけたことを言うと,保全生態学の第一線の研究者が各地で自治体の首長とか議員になれば良いのに! ということですけど(笑).ま,そんな人,なかなかいないよね~.

 でも,虫網振るったりトラップ掛けたりして採った昆虫の新種記載している県知事とか,自分で銃を持ってシカやイノシシを狩ったり有害鳥獣駆除をしてくれる市長とか,いたらウケると思うんだけどなぁ.

 そんなこんなで,新書での勉強と平行して歴史小説の『国盗り物語』やラノベの『のうりん』を読むと,単なるエンターテイメント以上のものを読み取れる気がします.でも,単なる思い込みかもしれません(笑)

 『国盗り物語』は,斉藤道三(松波庄九郎)が戦国時代初期に京都で油問屋の未亡人女主人を寝取って結婚することで店を乗っ取るところから始まって,美濃の国盗りまでが前半で,後半は道三の異なる側面を受け継いだ織田信長と明智光秀の話.

 斉藤道三は,すごく野心家で悪賢く,利益を独占する旧支配層を追放して乗っ取ることに力を尽くしつつ,自分の油問屋の店子たちや美濃の領民が豊かになるように力と金を惜しみなく費やすので人望の厚い人物として描かれていて,非常におもしろいです.

 京都の油問屋にいる妻に,美濃から始めて日本の国を盗るといって出立する前に,「出先でも嫁をとるとけど,それは美濃にいる別人のやることだから」(意訳)といって無理やり納得させてしまうマクロスフロンティアな展開とかも,おもしろいです.実際は小説と違って「斉藤道三」は二人分の人生が混ぜて語られているらしいので,おそらく油問屋の妻がいる道三と,美濃で小見の方や深吉野と子を成した道三は別人だったんでしょう.とはいえ,いろいろ参考に(?)なります.

 「楽市楽座」とかも岐阜にいると言葉だけは普通に目にするけれど,その本来の意味(既得権益を維持するための旧支配者層の作った法から解放して,市民が自由にものを売り買いして自分たちの利益を横取りされない自由市場)を知っておくのも,大事ですね.

 『のうりん』は,ラノベの皮をかぶったマジメ小説です.ギャグやパロディで満たしているように見せつつ,かなりちゃんと地方の社会や経済,農業の問題が論じられています.作中で主人公たちが農業のことについて激しく議論する場面が時々出てくるのは,ほぼガンダム(逆シャアとかZ)のセリフそのままなんですが,それなのにちゃんと農業の議論として的を射ているのがスゴイです.

 6巻最後の寄生獣ネタとかも,元ネタを知らなければ普通に良い話として終わらせてるようにしか見えない気がするけど,おもいっきりパロディだし.マジメなことを不真面目に伝えてますよね(笑).関西人が,他人をほめるときには絶対最後にオチをつけて素直にほめて終わりにしないような感じ? でも,高校生や大学生に地域社会の問題を知ってもらう上では,すごく優れた本ではないかと思ってます.(アニメ・下ネタが嫌いなマジメ学生には奨められませんが)

 『ぼくらはみんな河合荘』は,岐阜市が舞台のアニメだよ,と同僚の某ぬらりひょん教授に教えられてアニメを見たのが始まり.アニメの方は長良橋周辺を中心に,岐阜市内のあちこちが風景として出てくるのでご当地アニメだということはわかるけれど,内容的にはボチボチかなぁ,という感じでした.が,しかし,原作読んだらめっちゃ面白かったです(笑) 教えてくれた先生が「めぞん一刻みたいな感じ」と言ってたのも,アニメだとあまり感じなかったけど原作を読み進めたら,ああ,なるほど,という感じでした.ちなみに,地域再生とはあんまり関係ないです.のうりんのことを書いたのでついでです.でも,なんでもかんでも都会がいいんじゃなくて,ちょっと田舎な地方都市の楽しい生活がよく描かれてる気がします(言い訳).

 あー.それにしても2016年の岐阜で開催する魚類学会年会で切符先生か宮原るり先生に講演要旨集の表紙とか描いてもらえねーかなー.きっとお値段が高くて無理なんだろうけどさ.

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2013.12.31

今年秋頃以降に読んだ本

いろいろとシゴトが充実して忙しかった1年もようやく終わり.

魚類学会幹事の任期がこの12月で終わるし,今年度と来年度は卒業論文の指導をする必要が無いので,今のうちに論文を書いたりしなければなりません.

 さて,今年の秋ごろから読み終わった本がいろいろあるので,簡単なメモ程度の感想を残しておきます.

◆「科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと (岩波科学ライブラリー)」(岩波書店,2013年)

 生命科学者として著名だった江上不二夫さんの弟子による語録.同時代的に生きた生命科学者の人たちや,今でも分子生物学・生化学などにどっぷりつかっている人には感慨深いのかな…? 残念ながら,ボクはそんなには感動しませんでした.

◆「木曽谷の魚」(大衆書房,1954年.読んだのは1969年の復刻版)

 アジメドジョウの新種記載をした丹羽彌さんの本.50年くらい前の岐阜県では,魚の先生と言えば丹羽先生だったわけですが,この本は木曽川上流の主に長野県内の様子についての本.主に資料的な価値を求めて買ったのですが,一通り読むと丹羽先生の丁寧で正確な仕事ぶりが見えてきます.

◆「北海道 水辺の生き物の不思議」(北海道新聞社,2013年)

 北海道でのフィールドワークでわかったことがいろいろ読みやすく書かれています.ザリガニ,ゲンゴロウ,エゾサンショウウオ,水草,ヒブナ,そして外来種.ところどころ異論を言いたくなる部分もありますが,対象とする生物のチョイスが良いです.

◆「クマムシ博士の「最強生物」学講座: 私が愛した生きものたち」(新潮社,2013年)

 単なるクマムシマニアな本ではなく,紫外線・放射線・高温・乾燥などの極めて過酷な条件に絶えることのできる生物の細胞学的あるいは分子生物学的な機構についての知見を散りばめた,実に正当なサイエンスの本でした.

◆「孤独なバッタが群れるとき」(東海大学出版会,2012年)

 こちらはバッタに魅せられた前野・ウルド・浩太郎さんの本.研究者を志して,いろいろな経験を積みながらアフリカの大地へと旅立つ話.研究者を目指す学生には超・おススメの本.

※ちなみに,クマムシ本もバッタ本も,どちらも30代前半の若手研究者の熱い本です.ちょっと年上の自分から見ると,今の30代前半より若い生物学者は「自然の生き物のおもしろさ」を純粋に追い求めることが許される幸せな時代に研究者として育つことができたように見えます.今の40代以上の年代の生物学者が学生だった頃は,「日本の生物学における中世暗黒時代」とでも呼ぶべき「ナチュラルヒストリーの無い生物学」だったのですよ.ホントに.

その時代,細胞生物学,生化学,分子生物学などこそが生物学の本流とされて,野外のさまざまな動物を比較研究することがバカにされていた大学も多かったし,生態学の世界は今西思想に汚染されて科学から遠ざかり,21世紀の視点から見返せば,なんともヒドイ時代に思えます.(そうした中で,農学や水産学の中の実学として命をつないだ分類学,今西生態学の手の及ばぬ数理の世界で正当な進化の研究をしてきた遺伝学があるわけですが)

上述の江上語録が心に響かないのは,そうした「ナチュラルヒストリー無き生物学」の時代に主流だった方々の話だから共感しにくい気もするのですよね.

◆「読みがたり 岐阜のむかし話」(日本標準,2004年)

 基本的に昔話は好きだし,岐阜の自然の話をするときに歴史や民俗は大事なので,買って読んでみました.岐阜独自の話もいろいろあっておもしろかったのですが,全国的な昔話のアレンジと思われるものも結構あったので,本当に古くから伝わる地元の話ばかりでもないようでした.

◆「ビブリオバトル」(文春新書,2013年)

 1人5分の時間制限で,自分が面白いと思う本の紹介をする.そのときに紹介された本の中で,参加者が「最も読んでみたいと思った本」に投票する,というのがビブリオバトル.

 自分一人で面白い本を探すのは限界があるので,みんなで面白い本を紹介し合うというのが趣旨なのですが,参加者のプレゼン能力も上がるみたいですし,初年次セミナーとかのネタに良いかもしれないと思いました.

 ただ,この本ではビブリオバトルの効用ばかり強調されていて,ホントにそんなにうまくいくのかなぁ,と思ったり… ま,そのうち試しにやってみますかね.

 ちなみに,生物学系の人たちはビブリオというと腸炎ビブリオとかのVibrioをイメージすると思いますが,一般的なビブリオはビブリア古書堂の事件帖とかと共通するBiblioみたいです.

◆「増える変わる 生態系の行方」(信濃毎日新聞社,2013年)

 信濃毎日新聞の連載が本になったもの.写真がきれいで文章も読みやすい.シカの群れや,一面に広がる外来植物の写真とかは,かなりのインパクトがあります.

◆「就活のコノヤロー」(光文社新書,2013年)

 大学・就活ルポでたくさん本を出している石渡嶺司さんの新刊.この人の本は,なんだかよく買ってしまいます.読みやすいし.年々変わる大学生の就活事情の現在を小気味よくまとめています.大学のキャリアセンターとか,ホント,役に立たないよねー…

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2013.11.15

「いわな 川と森の生きものたち」

アクアトトで12/8までサケマス展(サケマスの生態展示より,子供が渓流魚の生態を体験できます的な内容です)が開催されており,その間,絵本「いわな 川と森の生きものたち」の原画展示と,売店で絵本を購入するとイワナの骨格クリアファイルがもらえるというステキイベントがあります.

 そんなわけで,そそくさと出かけて絵本を購入してきました!

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上二つが購入した絵本で,下がクリアファイルです.

 原画を見て,いいなぁと思っていたのですが,本も「いわな」の方は山の賑わいが,とっても鮮やかに描かれていて,自然いっぱいな雰囲気が伝わってきます.

「いわな 川と森の生きものたち」
文/佐藤成史・絵/あさりまゆみ.ポトス出版.2013年11月

 これまで,魚の絵本といえば村上康成さんの「ピンクぺっこん」「ピンクとスノーじいさん」「ピンク!パール!」の3部作が最高傑作で,これを超えるものはなかろうと思っていたのですが,考えを改めるときがきたようです.

(「やまめとさくらます」は2009年の作品なので,まだちょっと…… って感じ(^-^; )

クリアファイルも,魚類学雑誌とかを見慣れているせいか頭骨の書き込みが甘いのが気になりますけど,かなり良い雰囲気でした.

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2013.06.26

「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」

「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」川上和人著,技術評論社

 基本的には恐竜本なのですが,自然史の良質な入門書だと思います.分類学,生態学,古生物学のエッセンスを,おもしろく,そしてわかりやすく紹介しているので,高校生くらいからでも読める生物学の啓蒙書として広くおススメしたい感じ.

 文体は須藤靖さんの本とよく似ていて,とても軽快に読める本文+ネタ的な注釈です.あまりにも似ているので,両者に影響を与えた共通祖先的な作家がいるんじゃないかと思うのですが,ボクの偏った読書歴ではわかりませんでした.(もちろん,収斂進化かもしれませんが)

 まあ,ちょいちょい挟むネタが,ややオタクな中年向けな気がするので,その辺はナウなヤングには届かないかもしれません(笑)

 全然内容の紹介にはなってませんが(笑),無謀というわりには,用意周到に知識を集めて緻密に推論を重ねているので,ちゃんとした科学書として楽しめる本です.子どもの頃に図鑑で恐竜をおぼえた中年おじさんたちが最新の恐竜知識にアップデートする上でもおススメです.

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2013.06.15

「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方」

地方大学で「魚の先生」のようなことをやっていると,どうしてもアユのこととか,カワウのことを話題として聞くことになります.最近,漁協の組合員にもなったのですが,もらった書類を見ていると,猟期にカワウの頭を漁協に持っていけば,一頭¥2000円もらえるとか書いてあって,「へぇー」と思ったりしました.

 それはともかくとして,とにかくカワウはアユを食べてしまうということでいろいろ問題視されているわけで,ちょっとは勉強しなきゃなぁ,と思っていたところ,標題の本を見つけました.

「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方」 坪井潤一著,成山堂書店

 著者の坪井さんは水産試験場の魚類学者ですが,カワウ担当としてがんばっているようです.もともと鳥の研究から入ったわけでは方なので,魚や河川生態学の視点で広く問題を見ながら,具体的な対策を考える内容になっていて,とてもわかりやすいです.

 しかし,あえて蛇足を言うならば,カワウの有効利用の提案の中で,フンを肥料とした水田でのホンモロコ養魚を勧めるのはやめてほしかったかな…… 関東では,本当にホンモロコ教団がカルトとして浸透してるんだなぁ,とアンチ国内外来魚の立場としては思ったりします.それ以外は,とても良い本ですよ.ホントに.

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「舟を編む」と「辞書を編む」

しばらく前に「舟を編む」という映画を見ました.どういう映画かというと,国語辞典を作る映画です.それ以外に説明のしようもないし,それ以外の内容もないのですが,これが実に良い映画で,すごく面白かったのです.

映画「舟を編む」公式サイト

 自分が,生物学辞典にほんのわずかに関わったことがあるとか,7月初旬発売予定の某本の「用語解説」について執筆者の人と一緒に頭を悩ませたりしたので,多少なりとも親近感があったので見てきたのですが,予想外におもしろくて,淡々としてほのぼのとしたところが,とっても良かったのでした.

 さて,その後,大学生協の書籍売り場で,こんな新書も見つけました.

「辞書を編む」 飯間浩明著,光文社新書

 著者の飯間さんは「三省堂国語辞典」略して「三国」の編纂者の一人で,辞書作りの実際を淡々とおもしろく語っています.映画「舟を編む」の主人公が執筆した本かと思うほど,映画の登場人物と,文章から見える飯間さんのキャラクターが重なって見えます.

 それにしても,あらゆる言葉を集めて定義するという行為が,辞書の編纂者のシゴトなわけですが,この本を読んでいると,真摯な編纂者は世界の全てを知ることになるんじゃないかと思ってしまいました.そして,実際に,国語辞典を作るということは「ことばによる世界の模型作り」だと著者自身が最後に語っています.

 こういう本を読むと,辞書というものについて自分が知らなかった面が見えてきて,本当におもしろいです.

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2013.05.23

ちょっと前に読んだ本

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だいたい4月からゴールデンウイーク明けくらいまでに読んだ本の覚え書き.

◆「終末のラフター」 田辺イエロウ著.少年サンデーコミック.

 マンガは恒常的に読んでいるのですが,これは少年サンデーに短期連載されていたもので,連載時に良かったのでコミックも買ってしまったもの.

 いわゆる「普通の市民」の身勝手さ,心の醜さを見せつけながら,それでもそこから離れられない心理というのが,なんとも印象に残ります.

◆「御伽草子」 太宰治著.新潮文庫.

 マンガしか読んでないわけではなく,たまーに,こういうものも読みます(笑)

 以前,清水義範さんの「蕎麦ときしめん」を読んだ後,講談社文庫の「国語入試問題必勝法」も読んで,その中に太宰の「御伽草子」についての評論のパロディ(パスティーシュ)である「猿蟹合戦とは何か」という作品も収録されていたことや,「鬼灯の冷徹」の8巻でカチカチ山のウサギがメスなのは太宰の小説のイメージで…ということが書かれていたため,オリジナルを読もうかと思った次第.

 この本には,御伽草子以外にも「新釈諸国噺」なども収録されていて,中には読みにくい話もありましたが,概して楽しく読めました.とにかく貧乏で金に困っていながらプライドが高くて見栄っ張りな登場人物が多いんですけど,いろいろな本でちらりと読んだ太宰の人物像と重なる気がしますね.そして「御伽草子」の,カチカチ山のウサギは,確かにヒドイ(笑)

◆「県庁おもてなし課」 有川浩著.角川文庫.

 太宰治は一昔前の文学だけに,若干読みにくかったのですが,さすがに現代の小説は読みやすいです.

 しかし,これは……まちづくりとか地域振興とかのテキスト本として秀逸すぎるんじゃないか!? 公務員とか目指す学生は読んどいたほうがいいだろうね.

 箱物を作るのではなく,金を出しても作れない「自然」をうまく生かして,観光客目線で楽しめるようにする,という当たり前のことだけど行政が苦手なことを題材としてうまく料理しています.作品の舞台は高知だけど,多くの県に当てはまる話です.

 ただし,有川浩さんの小説は必ず恋愛要素が入っているらしいのだけど,ボクはその辺は全然ピンと来なかったです.うちの研究室に出入りしている業者の女性営業さんは,有川さんの恋愛要素が好きらしいのだけど……うーん,女の子目線の理想なのかなぁ…
(ちなみに,有川浩さんは女性です)

 そんなわけで,たぶん恋愛要素を中心にしているであろう映画版を見に行く気はないのであります.

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2013.04.08

魚と生命と

ここしばらくの間に,読んだ本の紹介をしときます.

「森の『恵み』は幻想か 科学者が考える森と人の関係」 蔵治光一郎 著.化学同人.2012年.

 水源もしくは治水のために山林が重要だとされていて,緑のダムとかいろいろと言われている森林の,水に関する作用に注目して説明している本.

 漠然としたイメージとして,森があれば大雨が降っても洪水になりにくく,雨が降らなくても川の水が枯れないと考えられていることが多いのですが,実はそれは作られた神話であって,実際はそれほど単純なものではないということが丁寧に説明されています.

 洪水になりにくい理由は,木によって雨水が地上まで到達するのを遅らせる作用や,蒸散などによる蒸発作用などが組み合わさって生じるので,確かに森には治水に役立つ「機能」があるようです.

 しかし,水源として考えた場合は,樹木が土壌中から吸い上げて蒸散させる水量があるために,森林が発達している場所では河川への水の流入量が減ることが,さまざまな実験等を通じて明らかになっているようです.ですから,はげ山だった場所に植林して森になると,その下の河川流量は減ることになります.

 実際に誤解されていたり,書き方一つで新たな誤解を生む内容だけに,非常に慎重に説明されていますから,正直読みやすさという点ではイマイチなのですが,河川を知るために森のことを勉強しておくための最初の一歩にはなるかと思います.

「科学随筆文庫20 魚と生命と」 丘英通・末広恭雄・檜山義夫 著.株式会社學生社.1978年.

 2011年の魚類学会でのオークションで買った本.2010年の時から出品されていたようで九州方面から流れてきた模様.こういう昔の学者の中には文章のうまい人がいて,本当におもしろい随筆があったりします.

 特にこれといって新しい知見があるわけではありませんが,自然と触れ合う楽しさが伝わってきて心地よいです.また,初出は昭和初期の文章もいくつかありますが,内容的には古くありません.ルイセンコとか出てくるのは時代を感じさせますが,決してそれに傾倒しているわけでもなく,冷静に見ているところなどは,すばらしいですね.

 3名の方の随筆集なので,それぞれにカラーが違いますから,それもまた良いです.こういう古い良いものが,消えてしまうのはもったいないので,研究論文以外の周辺資料もどこかにまとまっているといいのですが……

「タマゾン川 多摩川でいのちを考える」 山崎充哲 著.旬報社.2012年.

 小学校高学年でも読めるようにと書かれた本だと思いますが,そのすさまじい内容は,魚好きの人は全員読むべし,というくらいのものです.ア●ゾンのレビューはお気楽なことばかり書かれてますが,熱帯魚飼育や外来魚についての実際を知っていると,気楽に読み流せるような本ではありません.

 大都会を流れる多摩川が,どれほどのヒトのエゴにさらされているのか,そして,それを前にして諦めたり投げ出したりしない著者の山崎さんの強さにも感動をおぼえます.

 「多摩川のおさかなポスト」はマスコミでも取り上げられているので,その存在くらいは知っている人が多いと思いますが,この本を未読の魚好き,自然好きの人は,是非読んで衝撃を受けてください…

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2013.04.04

「日本の外来哺乳類」

2012年末の日本生物地理学会会報に「日本の外来哺乳類」という本の書評を書いたのですが,なにぶん目次とか含めて1ページに収まるようにしなければいけなかったので,ここに短縮前の「完全版」(もしくはディレクターズカット版?)の書評を挙げておきます.

日本の外来哺乳類: 管理戦略と生態系保全
山田文雄・小倉 剛・池田 透 (編). 東京大学出版会.2011年.

 外来種が地域の生態系に大小さまざまな影響を与えることは,21世紀の日本においては周知の事実である.実際には何十年も前から生態学者によって外来種の問題が指摘され,啓発の努力はなされてきたが,市民に広く問題が理解されるには,2005年に外来生物法が施行されるのを待たねばならなかったような気がする.法が出来てしまえば行政は従わざるを得ない.行政が動けば,その地域での賛否の議論が生じるだろうし,それによってマスコミや口コミを通して多くの市民が身近な問題として認識することになるので,外来生物法制定の影響は大きかったといえる.

 しかし,それ以前は外国(あるいは他地域)の良いものを積極的に導入して利用しようとする感覚が市民に根強かった.そして,導入された動植物は産業として成り立たなくなれば野外に放逐されてきた.

 外来哺乳類の多くは,そのような人間の身勝手に由来する.私設動物園の閉鎖で放逐されたタイワンザルやアカゲザル,ペットとして大量に輸入されたにも関わらず飼いきれないとして全国で放逐されたアライグマ,戦時中に毛皮用として養殖されたがその後放逐されたヌートリア,奄美や沖縄の山地に捨てられたノネコも人間の身勝手によるものである.意図的に野外に放されたマングースやシベリアイタチ,ノヤギもいる.

 こうした動物はかわいそうではあるが,放置することで在来生態系に多大な影響を及ぼすことになる.特に哺乳類は活動的で多くの餌を必要とすることから,生態系の様相を大きく変える生態系エンジニアである.ノヤギによって植生が失われて裸地化した小笠原諸島の映像などを見た人もいるだろう.ネズミ類も,意図的に導入されることはないものの,哺乳類の存在しなかった島嶼に船荷にまぎれて侵入して繁殖すると海鳥の卵を大量に捕食することもある.また本書では触れられていないが,イースター島の巨石文明が滅びた原因の一つとしてナンヨウネズミの侵入による森林の更新阻害も影響したとする説もある.

 これらの外来哺乳類による被害が顕在化してから場当たり的に捕殺していたのでは,被害はいつまでも続くだけでなく,駆除される外来哺乳類の個体数も増え続けるだけである.最小限の駆除個体数で根絶,もしくは被害を抑えられるように個体数を低減させるためには,早い段階で戦略的に充分な努力投資をしなければならない.

 しかし,どのような戦略なら良いのか? どれだけの人的・予算的な投資が必要なのか? 2000年代前半に外来種が日本国内で一般に広く認識され始めた段階では,和歌山県のタイワンザル対策や,奄美・沖縄のノネコ・マングース対策など喫緊の課題がありつつも,先の見えない状態で動物愛護団体などとの軋轢を生じながら研究者,行政,市民の協力のもとに努力が続けられてきた.

 この本は,教科書的な概論ではなく,そうした実践の歴史を記した“戦記物”である.もちろん,各章の執筆者は科学者として冷静に事実を記しており,いたずらに感情をあおるものではない.しかし,本書を通じて感じるのは,「絶対に成功させるという強い意志」を持ち,「確固たる科学技術を基盤として,揺るぎない信念のもとに外来生物対策を進めて」いった努力と成果の重要性である.タイワンザル対策も,ノネコ・マングース対策も,現在ではかなりの成果が上がっている.繁殖力の強いクマネズミ対策も,海外での根絶事例などをもとに戦略的に対策が取られている.そうした成果が得られるという事実の存在が,他の事例を進めていく力にもなる.

 400ページを超える専門書は読破するのが辛い場合もあるが,本書は全体的に読みやすくなるように十分に配慮して執筆されているため,多少の生態学の知識があれば哺乳類の専門家でなくとも簡単に読破できる.哺乳類以外を対象とする保全生態学の研究者や,ナチュラリスト,外来種も含めた野生生物管理にたずさわる行政担当者にもお勧めの一冊である.確実に知恵と勇気を分けてもらえるだろう.

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