長良川河口堰問題

2013.11.19

ニュースを読む試験

<問. 次の二つのニュースを読み比べてみましょう.>

【長野】 松本市の水道使用量が減少傾向 合併の人口増反映せず http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20131119/CK2013111902000015.html

【三重】 「川上ダムないと水不足」 伊賀市水道部、調査まとめる http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20131119/CK2013111902000022.html

<解答例>

 松本市の事例は,「使用量」が減少している.

 近年の水需要の減少は一般的な傾向であり,同様な事例は他の自治体でもおきている.(「水道使用量 値上げ」でネット検索すれば他の事例もわかる) したがって,今後の水源開発において過度の設備投資(ダム建設など)がおこなわれると,費用が回収できずに水道料金値上げにつながる可能性が高くなる.

 伊賀市の事例は,「給水量」が不足することになると主張している.

 給水量は,実際の使用量ではない.そのため,必要以上の過大な給水量が計画することで,ダムを建設しなければ給水量が賄えない計算を容易に机上で作り出すことができる.

 実際の使用量を無視して利水計画を立ててダム建設を行った場合,使用量が増大すれば水道料金の収入が増大するためにダム建設とそれに伴う給水設備の建設費に充てることができるが,使用量が増えなければ,水道料金を値上げすることになると考えられる.

<結論>

1.過大な水需要の予測

2.ダム建設

3.水道使用量の減少

4.水道料金の値上げ

もしくは,

1.過大な水需要の予測

2.ダム建設

3.水道使用量の減少

4.水道水の使用増加の呼びかけ

5.市民の水道水使用増

6.今後の水需要が増加と予測

2に戻る (以下,無限ループ)

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2013.09.26

9/29(日) なごや環境大学「よみがえれ長良川!」

今週末の日曜日に,なごや環境大学共育講座「よみがえれ長良川!」で講義をします.

2013929


 まだ参加可能なので,是非ご参加(あるいは宣伝?)をお願いします!

 参加申込みはこちらから.

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2013.05.01

長良川のアユ遡上量と河口堰の影響

 2012年度に愛知県がおこなっていた「長良川河口堰最適運用検討委員会」の環境チームの委員として,ボクは委員会に参加していたのですが,そのときの環境チームのミッションは現在までにおこなわれた各種調査等の情報をまとめて,長良川河口堰によって,どのような影響があったのか,また,河口堰の開門調査によってどのような影響が見込まれるのかを検討する,というものでした.

 委員会は基本的に公開でおこなわれたので(チームごとの打ち合わせなどは除く),そのときに配布した資料の中で,2012年度のボクの担当分の「まとめ」となるものを公開しておきます.

「アユなど通し回遊魚への開門効果と環境変化の予想」をダウンロード

「ヨシ等の抽水植物群落への開門効果と環境変化の予想」をダウンロード

 さて,これまでの資料を検討すると,長良川で産卵したアユの仔魚は,ほぼ全滅していて再生産には全く寄与していないのではないか,という予測が出てきます.

 まさかそんな極端なことは……と,自分で資料を作りながら内心思っていたのですが,どうもそうではなく,実際に長良川のアユの産卵は次世代に全く寄与していないという考えが正しい気がしてきました.

 なぜかというと,昨年度は長良川でエドワディエラ・イクタルリによるアユの大量死が起きており,落ちアユの時期に岐阜市で採れるアユも非常に少なく,新村安雄さんが毎年おこなっている「アユの産卵を見る会」でも,まったく産卵が見られなかったくらいで,長良川で産卵できたアユの資源量は例年に比べても著しく少なかったと見られています.

 もちろん,滋賀県などと違ってアユの産卵数などの推定出来る調査はなされていませんから,正確なところはわかりませんが,ボク自身も岐阜市内の魚類調査として長良川に出て,2011年はそれなりに目についたアユが,2012年は全然見られなかったことを経験しています.

 それにもかかわらず,今年のアユの遡上量は順調との報道がなされています.

「長良川の天然鮎「多い」 県河川環境研、今年の遡上数予測」 岐阜新聞2013年5月1日

 ようするに長良川のアユの産卵数が多かろうと少なかろうと,遡上数に影響しない.つまり,長良川のアユの再生産がゼロであったとしても,全く関係ないという事になります.

 かつては木曽三川で長良川が最もアユの多い川だとされてきました.そして,長良川河口堰運用後,木曽三川全体でアユの漁獲量が減少しています.

 長良川のアユの仔魚が全て死滅しているとすれば,木曽三川(を主とした伊勢湾奥部の河川)全体でのアユの再生産の量は,その分だけ減少すると考えられます.そして,湾奥で育った仔稚魚が母川回帰せずに各川に上れば,長良川だけが漁獲が減るのではなく,全体的に漁獲が減ることになります.

 ということで,長良川において昨年の産卵親魚数が著しく少なかったにもかかわらず,今年のアユの遡上がそれなりに多いという事は,すなわち,河口堰の影響で長良川のアユの仔魚は全滅しているという仮説を支持するわけです.

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2012.07.19

生物多様性国家戦略改定案

現在,環境省が次のパブコメを募集しています.

生物多様性国家戦略の改定(案)に関する意見募集(パブリックコメント)及び説明会の開催について(お知らせ)


 知り合いが,生物多様性国家戦略の改定(案)を読むと笑い死ぬこと必至,とブログに書いてたので,どんなものか見てみようとしたのですが,長いので,なかなか読めず…

 しかし,ダム事業についてのとこだけ抜粋するとこんな感じ.

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P.131
環境影響の軽減に関するその他の主な取組
(具体的施策)
○ ダム事業の実施にあたっては、計画段階より十分に自然環境へ配慮するように慎重な検討を行うとともに、引き続き、事前の環境調査、環境影響の評価などにより環境保全措置を講じるなど、多様な生物の生息・生育環境に与える影響を可能な限り回避・低減できるように努めていきます。また、供用後の調査成果をダム事業の計画や影響評価に反映させるよう努めていきます。(国土交通省)

P.158
3 ダムの整備などにあたっての環境配慮
(具体的施策)
○ ダム事業の実施にあたっては、計画段階より十分に自然環境へ配慮するように慎重な検討を行うとともに、引き続き、事前の環境調査、環境影響の評価などにより環境保全措置を講じるなど、多様な生物の生息・生育環境に与える影響を可能な限り回避・低減できるように努めていきます。また、供用後の調査成果をダム事業の計画や影響評価に反映させるよう努めていきます。(国土交通省)

P.162
2.2.1 正常流量の設定
(具体的施策)
○ 河川における流水の正常な機能を維持するために必要な流量である正常流量について、河川整備基本方針で設定するとともに、正常流量を確保するための方策として、ダムなどの既存施設の有効活用や水利用の合理化などを検討していきます。(国土交通省)

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 ようするに,ダム事業は今まで通り好き放題やるぞ,という話か Σ(゚д゚|||)

 そして,「長良川はダムが無いから正常流量を確保するために徳山ダムから水を引いて流します」という理屈を正当化したいと?

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2012.07.18

第1回長良川河口堰合同会議準備会

昨年度,愛知県知事が公約として「長良川河口堰開門調査」をおこなうためのプロジェクトチーム(PT)会議および専門委員会を開き,PTと専門委員会が報告書を取りまとめたことは,愛知・岐阜地域では何度も報道されてきました.
 日本魚類学会自然保護委員会も,長良川河口堰開門によって生物多様性の回復が見込めるとする専門委員会報告書を支持する意見書を国土交通省や愛知県,岐阜県などに送りました.
 今年は,その続きとして,開門調査実現に向けた愛知県内の検討委員会(愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会)を立ち上げるとともに,国土交通省側の専門家との「合同会議」が提案されています.
 ボクは検討委のメンバーなので,軽々なことを言うのはよろしくないのですが,一般にわかりやすく伝えるためにあえて言うならば,ようするに合同会議とは,河口堰を開門させたい愛知県側の委員と,河口堰を是が非でも今のまま維持したい国土交通省側の委員のガチバトルです.(検討委員会の時のこの資料を見ていただければ良くわかると思います → 第1回愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会 資料4
今回はそのガチバトルの準備となる合同会議の準備会が公開でおこなわれます.
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第1回長良川河口堰合同会議準備会
7月24日(火)1:00~3:00
傍聴申し込み 7月23日締め切り
 
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 ちなみに,ボクは準備会には出ませんが,こっそり傍聴に行くかもしれません.

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2011.11.29

<予告>シンポジウム「よみがえれ長良川! よみがえれ伊勢湾!」(12月10日)

忘れないうちに宣伝しておきます.ボクもパネラーとして参加しますので.
もしお時間のある方で愛知・岐阜・三重あたりにお住まいの方は是非ご参加ください.
 
 
Photo
 
 
 
Photo_2
 
 
 
12月10日(土)シンポジウム
『よみがえれ長良川!よみがえれ伊勢湾! ~長良川河口堰開門と生物多様性~』
          


            <シンポジウムのお知らせと協賛のお願い >

愛知県で長良川河口堰の検証が行われています。
河口堰の開門を願う私たちは、この検証を歓迎します。
堰が閉鎖されて16年。長良川の生態系は大きく傷つき、伊勢湾にも影響を及ぼしています。このシンポジウムは、昨年、生物多様性国際条約締約国会議COP10 を開催したこの地において、生態系の回復につながる長良川河口堰の開門をめざして取り組むものです。
 
                       記


 
日時:12月10日(土) PM 1:30~5:30
 会場:名古屋市 伏見ライフプラザ・鯱城ホール
           (地下鉄東山線・鶴舞線「伏見駅」下車6番出口南へ徒歩5分)
     *入場無料(資料代として500円のカンパをお願いします)
 
 
 
 
 ・挨拶  大村秀章   愛知県知事(予定) 
      河村たかし  名古屋市長(予定)
      近藤昭一   前環境副大臣    
      今本博健   長良川河口堰検証専門委員会共同座長 京都大学名誉教授
 
 ・連帯挨拶  陣内 隆之  有明海漁民・市民ネットワーク 
 ・トーク&ハーモニカ
        「長良川と私」 野田知佑 (カヌーイスト、作家)
 ・基調報告 「3.11を経験した今、長良川河口堰開門・生物多様性を考える」
        大沼淳一 (実行委員会代表、生命流域ネットワーク)   
 

 ~~~~~ シンポジウム 「長良川河口堰開門と生物多様性」 ~~~~~~
 
 コーディネータ 亀井 浩次 (藤前干潟を守る会)
 パネラー    大橋 亮一 (長良川漁師)              
        蔵治 光一郎(長良川河口堰検証PT・専門委員会委員
                 東京大学生態水文学研究所長)
        高山 進  (国連生物多様性の10年市民ネットワーク共同代表)
       向井 貴彦 (岐阜大学准教授・魚類学)      (50音順)
             

  主催:「よみがえれ長良川!よみがえれ伊勢湾!」実行委員会
        ホームページ http://yomigaere.net

  多数ある後援・協賛団体の一覧の最新版は↑でご覧ください.

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2011.11.17

長良川河口堰開門調査関連ニュース

国交省委で批判相次ぐ 河口堰の開門求める報告書 (2011年11月15日中日新聞 愛知県版) 
 
長良川河口堰に関しては,国土交通省は「必要で環境影響は小さい」と是が非でもしておきたいわけなので,このような話が出てくるのは当然.
 ただし,記事の最後に書かれているように,愛知県の専門委員会では意見を言わずに,こそこそとお上におもねる御用学者ーズ.なんだかねぇ…
 
 
 
平成23年度 第1回中部地方ダム等管理フォローアップ委員会
http://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/dam_followup/h23.htm

 
議事要旨 (=御用学者ーズのご意見)
http://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/dam_followup/pdf/h23_gijiyoushi.pdf
↑国土交通省は,これをもって「専門家の意見」と言い張るのですよ.
 
 
 保全生態学を志す若者は,国土交通省とは,こういう意見を採用して「専門的見地からのご意見」と称する役所だということを,よーく理解してほしいです.
 
 地方によっては,ちょっとした自然再生事業みたいなことも国土交通省がおこなっていますが,そうしたことを免罪符にさせてはいけないし,生態学の研究者に小銭を与えて飼いならすこともよくおこなわれてますが,もしも,そうして飼いならされて正論を言わなくなる研究者がいたら,それは「御用学者」の仲間です.
 保全関係の集まりでも,「若いのにすっかり飼いならされて…」と思えるようなヒトもいるのが悲しいような,馬鹿馬鹿しいような(苦笑)

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2011.10.09

3分でわかる長良川河口堰「開門調査」問題

今日は,美濃加茂市に池干し外来魚駆除に行ってきました.その話は,また後日書くとして,愛知県でおこなわれている長良川河口堰開門調査について簡潔にまとめられた新聞記事があったので,紹介しておきます.
 
 
 
フォーカスぎふ「長良川河口堰論争再び過熱 」
 「開門調査」愛知県に提言見通しで波紋
岐阜新聞 2011年10月 9日(日)
 
 
 
 愛知県の河口堰検証専門委員会報告書(案)へのパブコメは10月23日までです!
 
 
 また,10/17(月)は.JR岐阜駅のハートフルスクエアGで,18:30から河口堰検証専門委員による「報告書(案)」についての説明会が開かれます.岐阜近郊で興味のある皆さんは,是非御参加ください.

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2011.09.27

写真展「よみがえれ長良川」

岐阜駅のハートフルスクエアGの2階で「よみがえれ長良川」の写真展開催中です.9/30まで.
 
 
P9251022
 
 
P9251023
 
 
 基本的には廊下での展示なのでタダで見られます.河口堰建設前の長良川の河口から源流までの21枚.
 美しいです……
 
 3000円以上カンパして,欲しい写真を備え付けの紙に書いておけば,展示終了後に抽選で額縁ごと写真がもらえるらしいのですが,結構たくさんの紙が集まってました.
 
 小規模なので遠方から交通費を使って来てもらうのは気が引けますが,お近くの方はどうぞ.
 ボクは一度1人で見たのですが,今日(9/26),学生達と一緒に魚類学会に行くための切符を買いに岐阜駅に来たので再度見てきました.一人で見るよりも,地元育ちの子たちと一緒に見ると楽しいですね.
 
 
◆9/25(日)は,うちの近所の長良川河川敷で観察会.
 
 
P9250999
哺乳類が専門のK先生がいきなり草むらに入っていったと思うと…
 
 
P9251000
カヤネズミの巣でした.空き巣だったようです.
 
 
P9251009
オニグルミが実をつけていましたが,食べるにはまだ早いようです.
 
 
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川原の砂地にはアリジゴクがいました.
 
 
P9251021
これはキイロスズメの幼虫かな? ひときわ目を引く巨大イモムシです.
 
 
 他にも撮影できた昆虫写真はミクシに載せときました.
 
 
 長良川は,まだ水量が多めでしたが,透明度の高いきれいな水でした.大水が何回かあったので,お盆の頃の猛暑で出来た汚れはすっかり洗い流されてました.もうちょっと気温が高ければ,まだ何度か泳ぎたかったな~
 
 
◆9/26(月),昼間は学生と学会行きおよび後期のゼミ関連の打ち合わせなどなど.
 溜まっていた査読は済ませることが出来たので(短いコメントでrejectって書いてしまいましたがgawk),最近新たに来た原稿の査読依頼があと一つ.
 夜,家に帰ったらチョウセンカマキリがいました.
 
 P9261025
ここ数年,コカマキリやハラビロカマキリを見る機会はしばしばあったのに,この種類はちょっとご無沙汰でした.
 
 
◆「狩り」については,結局AGガンスの装備をいじってガード強化スキルをつけることで「カウンターバランス」を日曜日にソロクリア.しかし,「狩人の矜持」も「カウンターバランス」も,学生達と一緒にやると,複数名なのですごく簡単でした… あんなに1人で苦労したのにdespair

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2011.07.08

【このメンツは】長良川河口堰検証第1回専門委員会、第3回公開ヒアリング及び第3回プロジェクトチーム会議の開催【すごいぞ】

愛知県の長良川河口堰の検証に関する第3回公開ヒアリングの案内が出ました.


長良川河口堰検証第1回専門委員会、第3回公開ヒアリング及び第3回プロジェクトチーム会議の開催並びに一般傍聴者の募集について
 
 傍聴申し込み締め切りは7/12(火).
 開催は7/14(木)です!

 第1回は岐大の富樫先生などを招いて水需要などについて.第2回は長良川の漁師の大橋亮一さんなどを招いての漁業への影響について(かな? 自分が参加してないので…).
 そして,今回は自然環境と塩害,治水に関してといったところでしょうか.
 
 
 国土交通省お手盛りの検証モドキには絶対呼ばれないガチメンバーがちゃんと入ってます.もちろん,岐阜では御用学者として有名な人たちもパワーバランスとして入れてあります.(なるべく公平な舞台を用意した上で決着をつけてもらわないと,意味が無いですからね)
 
 ヒアリングには宮本博司さん(←知らない人は「絶体絶命の淡水魚イタセンパラ」をすぐに買ってきましょう)と鷲谷いづみさん(←保全生態学に興味のある人には説明不要の著名人ですね).
 
 
 と,いうことで,この日は予定が空いているので,ボクは傍聴の申し込みをしておきました.
 
 
*****(以下,蛇足)*****

 こういう場が開かれるのは,名古屋市長選と愛知県知事選の結果というのが至近的な要因ではありますが,その前に愛知名古屋COP10と岐阜県の海づくり大会が開催されたことで,マスコミが河口堰問題をさかんに取り上げて世論を作っておいてくれたからという面も大きいでしょう.(もちろん,それ以前に木曽三川の開発で国土交通省がやりたい放題してきたのが,あまりにも目にあまる所業だったから,ともいえるでしょうけど)

 もし,これで河口堰のゲート開放となれば,愛知名古屋COP10が開かれたかいもあるというものです.もちろん,自然環境に関してはゲート開放で充分ですが,本来重視すべき防災という観点からは,河口堰撤去が最善です.
 
 興味のある人は調べてみればイイですが,国土交通省はダム建設などを「人命財産を守るため」と称することが,これまでの通例です.しかし,それならば長良川の場合は洪水流下の妨げとなる下流の河床のマウンドを撤去するだけで充分であり,もし,それで一部の水田に塩害が出たとしても,それを補償する金額は河口堰の建設費用よりもずっと安かったわけです.しかも,塩害で家が流されたり多くの人命が失われるわけではない.
 
 ところが,河床のマウンド撤去による塩害防止という名目で河口堰を建設すると,塩害の補償よりも高額な上,洪水時の河川水の流下,あるいは海からの高潮や津波の進路を妨害することで,河口堰周辺の海抜0m地帯を極端なリスクにさらします.(おそらく,想定される○年に一度の規模の洪水や高潮には対応できる設計だと国土交通省は言うでしょうけど,そういう理屈が被害を大きくするのは,この3月に現実となりました) この場合,塩害とは違って,人命財産を確実に危険にさらします.

 つまり,国土交通省は「人命財産」を適当な方便として言うばかりで,実際に防災に効果的かどうかなどというのは二の次としか思えないことをしてきました.

 現在岐阜県で計画されている「内ヶ谷ダム」もそうです.内ヶ谷ダムを作れば,郡上の方で大雨が降った場合に長良川中流の水位を5cm下げる効果があるそうです.つまり,ダムが出来れば,ちょっと安心になる,とか.

 しかし,そのダムが完成する予定は30年くらい先です.そして,財政難の岐阜県がダムの費用を負担すると,今でも徳山ダムの借金でお金が無いのに,さらに費用がかかることになるので,通常の河川の堤防強化などが予算不足のためにできなくなります.つまり,30年先に,少しの安心を得るために,それまで県土全体を危険にさらしておきながら「防災」とか「人命財産を守る」とか口先だけ言っているわけです.

 最近は,魚類などを対象に研究していた若手研究者が,土木系の研究者と交流を持つこともあり,「彼らの使命感はスゴイですよ」的な話を聞くこともありますが,若者はこうしてだまされていくんだなぁ~,と思ったりします(苦笑).だまされているのは若手魚類学者が,というだけでなくて,若い河川技術者も,という意味です.使命に燃えれば正しいというわけじゃないんですよ… いくら優れた技術を持っていても,それを適切に使わなければ意味が無いし,河川官僚の計画に唯々諾々としたがうならば,そうした研究者は単なる御用学者でしょう.その人が,本当はどれほど高潔な人格であったとしても,実際の行為が単なる御用学者であれば,その人が内に使命感を持っていようとどうだろうと,何の意味もありません.
 

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