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May 2016

2016.05.06

タゴガエルの系統地理

先日,自分のラボで研究したオイカワの系統地理論文を紹介しました.他にも淡水魚の系統地理のデータで論文化できてないものがたくさんあるので,早く論文にしないといけないのですが…

 で,それはともかく,最近は両生類にもちょっと興味が出て,いろいろ調べてるのですが(ただし,研究対象とするには先行研究が充実しているので手を出しにくい),GW連休に岐阜の山の方でタゴガエルの鳴き声がする場所を見つけて,Facebookに鳴き声入り画像を投稿したところ,いろいろなところにタゴガエルがいるらしいことをコメントでもらいました.

 また,タゴガエルについては,「幻のカエル―がけに卵をうむタゴガエル」という本の中で,房総半島では3月が産卵期と書かれているのに,岐阜では5月に鳴いているので,遺伝的に違うんじゃないかと思って論文を調べてみました.で,見つけたのがこれ.
 
Eto et al. (2012) Highly Complex Mitochondrial DNA Genealogy in an Endemic Japanese Subterranean Breeding Brown Frog Rana tagoi (Amphibia, Anura, Ranidae).  Zool. Sci. 29: 662-671.
 
 いやはや,すごくサンプリングが充実していて,しかも結果が面白い!
 
 要点としては,
 
・日本産タゴガエル類(タゴガエル,ナガレタゴガエル,オキタゴガエル,ヤクシマタゴガエル)の系統は大きく2群(A, B)に分かれ,A系統は(本州の東半分のタゴ+四国・九州のタゴ+ナガレタゴ+ヤクシマタゴ),B系統は(滋賀県・三重県以西の本州のタゴ+オキタゴ).
 
・いろいろ含むA系統は,A1(東北から北陸,近畿北部),A2+A3(ナガレタゴ+関東地方のタゴ),A4+A5+A6(群馬,長野・山梨・郡上,愛知・伊勢・ネバタゴ),A7(四国),A8(ヤクシマタゴ),A9(九州)に分けられる.
 
・B系統は,B1(オキタゴ),B2a(滋賀・三重から兵庫・岡山あたり)とB2b(鳥取・島根・広島・山口)に分けられる.
 
 と,いう感じ.
 
 かなり地域差があって,なんとなくパターンがあるのが面白い.
 
 「幻のカエル」は房総半島のタゴガエルなので,ミトコンドリアDNAについてはナガレタゴガエルの系統に含まれる.これをもって関東のタゴはナガレタゴから進化した,みたいに考えるのは早計なんですが,少なくともナガレタゴと近縁な可能性,もしくはナガレタゴと過去に交雑した可能性のどちらかはあるわけで,それが他地域との産卵期の違いなどと関連していたとするとおもしろい.
 
 本州西部のB2系統の分布も,B2aとB2bの分布は,まだ論文になってないアレとかコレとかの淡水魚に似てるなぁ…という感じ.一方はボクの怠慢だけど,もう一つは某大学で博士過程で研究してた人がいたんだけどな…
 
 あとは,岐阜県あたりにいろいろな系統がいるのが気になります(笑)
 
Photo
 
 北の方からはA1系統,
 南西からはB2系統,
 南東からはA6系統が侵攻し,
 孤立したA5系統が奥美濃に残っているという感じ?? 東濃から中濃がどうなっているのか気になりますね.
(なお,この図は論文の記述を元に向井が作図したものです)
 
 
 記号だと味気ないという方には,
 
 越後・越中・越前・北近江からは上杉・浅井,
 近江南部・桑名から六角,
 尾張・三河からは織田・徳川

 といった勢力に囲まれている,という戦国時代の勢力図になぞらえればわかりやすいかな? さあ,どうなる美濃国! (笑)

 

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