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January 2015

2015.01.18

「地域再生」はヒトの保全生態学…のような気がしなくもない

2014年は長良川おんぱくに今まで以上に関わったり,大学の公開講座で「地域再生」をテーマにした講義を引き受けたりしたので,ずいぶんと「地域科学部」の先生らしくなったものだなぁ,と我ながら思ったりします.

 こういう立場になったのには,やはり周りの影響があって,まちづくりなどに関わる先生方にいろいろと引っ張り込まれたりして,門前の小僧なりに学ぶところがあったのが大きいかもしれません.また,自然環境の保全を考える上で,それぞれの地域ごとのまちづくりが重要なのは自明ですから,地域再生に関わらせてもらえるというのは大変にありがたいことですし,チャンスは活かすべきだと思ってます.

 まあ,そういうことで,何も知らないわけにはいかないので,昨年は地域再生関係の本をいろいろ読んでみました.

『地域再生』 香坂玲 著.2012年.岩波ブックレット,79pp. 本体¥640円+税

『里山資本主義』 藻谷浩介・NHK広島取材班 著.2013年.角川oneテーマ21,308pp. 本体¥781円+税

『地域再生の罠』 久繁哲之介 著.2010年.ちくま新書,254pp. 本体¥780円+税

『地方消滅』 増田寛也 編著.2014年.中公新書,241pp. 本体¥820円+税


<その他,微妙に関係?する本>

『国盗り物語』(1~4巻) 司馬遼太郎 著.新潮文庫.

『のうりん』(1~9巻,以下続刊) 白鳥士郎 著,切符 イラスト.GA文庫.

『ぼくらはみんな河合荘』(1~6巻,以下続刊) 宮原るり 著. ヤングキング コミックス.

<その他>が歴史小説だったり,ラノベだったり,マンガだったりしますが,これはこれで頭の肥しになるのです.ちなみに「のうりん」はアニメ(1~4巻までの内容)を2回見たので,原作の1~4巻は1回しか読んでませんが,5~9巻は2回読みました.あと,コミック版とスピンオフの「のうりんプチ」と「のうりん-野生-」も持ってます.なんか,めっちゃお気に入りですね…


 さて,地域再生という言葉に関しては,昔は「まちづくり」と言われることが多かったような気がしますが,商店街などの「まち」だけでなく,山間地のような田舎も含めた社会の維持・再生を指しての言葉として近年よく使われるようになってきた感じがします.大学の公開講座で企画者の先生と話をしていて,「せっかくなので多少勉強してみたんですが,今「地域再生」って,すごく流行ってるんですね!」と言ったら,「すごく流行ってますよ.」と返されて,自分の見識の無さをあらためて認識しました(苦笑)

 実際に読んだ中では,『地域再生』は正直言っておもしろくなかったです.単なる事例集.たぶん,講義で使うテキストなんでしょう.『里山資本主義』はベストセラーだけあって読みやすいし,面白い本です.いろいろ考えさせられますね.過疎化が進むような「田舎」に多くの資源があり,それを活用することで経済至上主義の都市住民の資本主義とは違う,災害や経済危機に強い生活を保障するという基本的な考え方には,大いに共感できます.島根県のホンモロコ養殖も紹介されていますが,これはあまりよろしくないですけどね.

 『地域再生の罠』は,読んでみると結構面白いのですが,話の展開が強引かな.おそらく多くの経験をもとにして,その中の特徴的なところをわかりやすく抜き出して書いているのだろうけど,ちょっと乱暴な展開なので大した根拠が無いのに決めつけているように見える部分もあるかも.アマゾンのアンチなコメントはそういうところが引っかかったんでしょうね.ちなみに,岐阜市の街を衰退させる取り組みと市役所のヤル気の無さもけちょんけちょんに書かれてます.いや,まったくその通りかと(笑).

 『地方消滅』は,2014年に少しニュースになった人口減少による「消滅可能性都市」という予測についての根拠や,今後の日本の人口減少についての詳細を分析,対策を提言する本……ですが,「消滅可能性都市」を提唱した日本創成会議の報告書が半分で,残り半分は対談.報告書部分は背景知識が無いとちょっと読みにくいところもあるし,対策もピンとこない.分かる人には分かるんだと思う.しかし,この本は今後の日本の人口トレンドを知っておく上で必読でしょう.人口減少が起こる要因と,その規模を知らずに地域再生なんてありえないし,生物系の人たちの好きな「里山生態系の保全」もありえないですから.いくつか重要な論点はありますが,地方から東京に人口が集まることによって,地方の人口減少が進むとともに,首都圏に集まった若者が晩婚・未婚化して子どもを残さないので,日本全体の人口を集めて消滅させるブラックホール化しているというのは,考えてみたら当たり前の重要な事実.いずれ東京に吸収される地方の人口も減少しすぎて,東京の人口すら減少するという予測は,今のままの世の中だったら当然の帰結ですし.政府の少子化対策とか,いろいろ見当違いなのがよく分かります.

 こうした地域再生についての基礎知識を得るための本を読んだり,いろいろ関わったりして思ったのは,地域再生とかまちづくりって,結局「ヒト」という動物の地域個体群の保全生態学なんじゃね?? ってこと.

 生息環境の変化で移出の増加繁殖率の減少が生じ,その結果として全体的な個体数が減少しつつ,メタ個体群を構成する小さな生息地から順に消滅しているのが,現在とこれから数十年の日本の現状であって,これって保全生態学者が絶滅危惧種相手にみていることじゃないのかなぁ,と思うのですよ.

 そうすると,優れた保全生態学者(というものが存在するなら)は,すぐれた地域再生の担い手にもなりうるわけで,そして逆もまたしかりではないかと.問題は,今は保全生態学の人と地域再生の人は,お互い無関係に生きていることが多いということかな.強いて言えば,元滋賀県知事の嘉田さんが理想形に近かった唯一の例かも.

 とりあえず,社会学や地域再生の人たちは,基本的に自然のことも生態学のことも知らないし,関心も薄いので,両方をつなぐなら保全生態学の人が入り込むしかないし,それによって自然を活かして地域再生もすることができるようになれば…というのが,いろいろ勉強した感想.もっとぶっちゃけたことを言うと,保全生態学の第一線の研究者が各地で自治体の首長とか議員になれば良いのに! ということですけど(笑).ま,そんな人,なかなかいないよね~.

 でも,虫網振るったりトラップ掛けたりして採った昆虫の新種記載している県知事とか,自分で銃を持ってシカやイノシシを狩ったり有害鳥獣駆除をしてくれる市長とか,いたらウケると思うんだけどなぁ.

 そんなこんなで,新書での勉強と平行して歴史小説の『国盗り物語』やラノベの『のうりん』を読むと,単なるエンターテイメント以上のものを読み取れる気がします.でも,単なる思い込みかもしれません(笑)

 『国盗り物語』は,斉藤道三(松波庄九郎)が戦国時代初期に京都で油問屋の未亡人女主人を寝取って結婚することで店を乗っ取るところから始まって,美濃の国盗りまでが前半で,後半は道三の異なる側面を受け継いだ織田信長と明智光秀の話.

 斉藤道三は,すごく野心家で悪賢く,利益を独占する旧支配層を追放して乗っ取ることに力を尽くしつつ,自分の油問屋の店子たちや美濃の領民が豊かになるように力と金を惜しみなく費やすので人望の厚い人物として描かれていて,非常におもしろいです.

 京都の油問屋にいる妻に,美濃から始めて日本の国を盗るといって出立する前に,「出先でも嫁をとるとけど,それは美濃にいる別人のやることだから」(意訳)といって無理やり納得させてしまうマクロスフロンティアな展開とかも,おもしろいです.実際は小説と違って「斉藤道三」は二人分の人生が混ぜて語られているらしいので,おそらく油問屋の妻がいる道三と,美濃で小見の方や深吉野と子を成した道三は別人だったんでしょう.とはいえ,いろいろ参考に(?)なります.

 「楽市楽座」とかも岐阜にいると言葉だけは普通に目にするけれど,その本来の意味(既得権益を維持するための旧支配者層の作った法から解放して,市民が自由にものを売り買いして自分たちの利益を横取りされない自由市場)を知っておくのも,大事ですね.

 『のうりん』は,ラノベの皮をかぶったマジメ小説です.ギャグやパロディで満たしているように見せつつ,かなりちゃんと地方の社会や経済,農業の問題が論じられています.作中で主人公たちが農業のことについて激しく議論する場面が時々出てくるのは,ほぼガンダム(逆シャアとかZ)のセリフそのままなんですが,それなのにちゃんと農業の議論として的を射ているのがスゴイです.

 6巻最後の寄生獣ネタとかも,元ネタを知らなければ普通に良い話として終わらせてるようにしか見えない気がするけど,おもいっきりパロディだし.マジメなことを不真面目に伝えてますよね(笑).関西人が,他人をほめるときには絶対最後にオチをつけて素直にほめて終わりにしないような感じ? でも,高校生や大学生に地域社会の問題を知ってもらう上では,すごく優れた本ではないかと思ってます.(アニメ・下ネタが嫌いなマジメ学生には奨められませんが)

 『ぼくらはみんな河合荘』は,岐阜市が舞台のアニメだよ,と同僚の某ぬらりひょん教授に教えられてアニメを見たのが始まり.アニメの方は長良橋周辺を中心に,岐阜市内のあちこちが風景として出てくるのでご当地アニメだということはわかるけれど,内容的にはボチボチかなぁ,という感じでした.が,しかし,原作読んだらめっちゃ面白かったです(笑) 教えてくれた先生が「めぞん一刻みたいな感じ」と言ってたのも,アニメだとあまり感じなかったけど原作を読み進めたら,ああ,なるほど,という感じでした.ちなみに,地域再生とはあんまり関係ないです.のうりんのことを書いたのでついでです.でも,なんでもかんでも都会がいいんじゃなくて,ちょっと田舎な地方都市の楽しい生活がよく描かれてる気がします(言い訳).

 あー.それにしても2016年の岐阜で開催する魚類学会年会で切符先生か宮原るり先生に講演要旨集の表紙とか描いてもらえねーかなー.きっとお値段が高くて無理なんだろうけどさ.

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