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2013.02.08

古書3冊分の感想

毎年1月頃は忙しいので,2月くらいになるとだいぶん疲労がたまってきます(苦笑) それでも少しずつシゴトが片付いているし,大学の講義も一通り終えたので,あとは少しずつ楽になるはず.(ま,他の人がやってくれそうなシゴトを多少忘却したり,ミスがあっても頭を下げれば済むならそれでよし,とすることでやり過ごしたものもありますが)

 さて,合間合間に本を読んだりしてきたので,感想をメモ程度に.今回は古書中心です.

◆「流れ藻」 内田恵太郎著 西日本新聞社.

 魚類研究者などの間では著名な故内田恵太郎先生のエッセイ集.2012年の魚類学会年会のオークションで落札しました.

 内田先生のエッセイは岩波新書の「稚魚を求めて」が有名であり,なおかつ名著なわけですが,こちらはもっと私的な自叙伝.ボクのように卑小な研究者から見れば,天上の神のような大学者の先生なわけですが,幼少期から若者の頃の悩みや,若さゆえの思いこみなどは,予想外に共感できることも多く,神様がまだ人間だった頃の話として興味深く読みました.ちなみに内田先生の幼少期は明治時代であり,この本は大学を退官後の1972年に出版されています.

 また,文章がすばらしいので,城ケ島で暮らしていた子どもの頃,海で泳いでいるところに,のちに奥様となられる方と出会うくだりなどは,モノクロ映画で場面が目に浮かびそうでした(笑) 中盤は奥様との夫婦問答の形で,いろいろと思うところを書かれているのですが,戦争の時の経験などを読むと,今が幸せな時代だと思わずにはいられません.

◆「ふるさとの自然」 岐阜県小中学校長会編 財団法人岐阜県校長会館発行.

 岐阜市内の柳ヶ瀬近くで昼11時から17時までしか営業していない古書店で買いました.数年前に「意外に良い本がありますよ」と教えていただいたことがあって,行ってみようと思いつつ営業時間の短さの壁に阻まれて行けなかった店なんですが,このような地域誌に関する本があって,よかったです.しかし,魚関係の地元の古書は全然無かったのが残念.

 さて,この本は1976年に発行されたもので,郷土の自然とくらしを,大人にも子供にも知ってもらいたいということで編纂されています.子どもでも読めるようにと意識して書かれているので,読みやすくて興味深い内容です.動植物のことだけでなく,地形,地質や,それぞれの自然環境の特質を生かしたくらしのことが紹介されているので,岐阜県の自然のことについての入門書として非常に役立ちます.また,1976年の本なので,現在との違いという視点でもおもしろいですね.

◆「蕎麦ときしめん」 清水義範著 講談社文庫.

 清水義範さんの小説は有名なものが多いのですが,ほとんど手を出したことがありませんでした.しかし,たまたまパスティーシュ小説と呼ばれるジャンルのことを知って,近所の本屋にあったこの本を買ってみました.

 パスティーシュ小説というのは他の作家の文体を模倣した小説で,清水義範さんが得意としているものらしいのですが,司馬遼太郎の文体で書かれたさるかに合戦の「猿蟹の賦」が読みたかったので購入.あとで知ったのですが,「猿蟹の賦」は,ちくま文庫の「猿蟹合戦とは何か―清水義範パスティーシュ100〈1の巻〉」にも収録されていたようです.

 さてさて,この講談社文庫「蕎麦ときしめん」は,1989年初版で,収録作品の初出は1983年から1986年のものです.一つめの作品「蕎麦ときしめん」は,当時はやっていたという「日本人とユダヤ人」という本のパスティーシュで,東京人から見た名古屋人というスタイルの論文を紹介するということになっています.

 …… しかし,これがまたおもしろくて,もともと中京圏出身ではない立場から見て大笑いできる誇張された名古屋人論で,とても良かったです.20年以上前の作品だけど,今も変わらぬ名古屋文化! よそから来た人が,名古屋弁を習得して名古屋人を装ったとしても,すぐにばれてしまう……などというくだりは,「河村市長の名古屋弁はわざとらしくていかん」「あの人(河村市長)三重県出身なのに」などと言っている人がいたのを思い出しました.ええやんか,別にどこ出身でも(笑)!

 もちろん,猿蟹の賦もおもしろかったです.司馬遼太郎が読みたくなったなぁ.

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