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2011.11.25

魚類の新標準和名候補名の公表前流布行為の抑制に関する提言

標題は日本魚類学会からの提案.
詳しくはこちら →魚類の新標準和名候補名の公表前流布行為の抑制に関する提言 
 
 
 生きものの「名前」については,誰がどう呼ぼうと勝手といえば勝手なんですが,それでも意思疎通や商売においては,同じものは同じ名前で呼ばれたほうが良いです.というか,場合によっては絶対に必要.
 
 たとえば,食材となる生物について,地方ごとに呼び名が違うことがあります.「どんこ」といえば,西日本では川にすむハゼですが,東日本では沿岸にすむチゴダラ(エゾイソアイナメ)です(←この時点ですでに混乱しているw).ですから,東日本の人が西日本で「どんこが食べたい」と言うと,期待はずれのものが出てくることになります.もちろん,標準和名のドンコも,地方名でどんこといわれるハゼ類いろいろもそれぞれ美味なのですが,チゴダラとは全く違います.
 
 こういうことが,単に個人の経験や笑い話ですむなら良いのですが,産地偽装や商品偽装につながると大きな問題になります.本当は安価な原料を,名前を偽って高額で売るということがなされては行けないので,地方名は地方名として尊重しつつも,いざというときのために全国共通の標準和名もあったほうがよいわけです.
 
 また,食材でない場合でも,研究や自然観察の際に,同じ種類の生物を示す標準名は必要です.そのために世界共通の名前として学名があり,アルファベットになじみにくい日本国内用に標準和名があります.
 
 学名については,世界中のさまざまな文化の間で共通した運用ができるように,厳密に規約が作られて,命名の仕方や公表の仕方が定められています.

 標準和名は,あくまでも日本国内での話しなので,そこまで厳密な運用はなされてこなかったですし,一般市民に馴染みの薄い微小な生物などでは「和名がなければ学名を使えばいいじゃない」というマリー・アントワネット的な発想での運用がされていました.(パンがなければ…の言葉はマリー・アントワネットが言ったわけではないという話もありますが)
 
 しかし,大型の動物や魚類,昆虫類,維管束植物のようにアマチュアを含めた多くの人たちが関心のある生物については,皆で知識を共有して,自然についての理解を深めたほうが生産的でしょう.
 
 
 と,かなり長い前置きをしてしまったわけですが,要するに興味を持つ人の裾野が広い生物については,新発見をしたときに発見者が功名心をもとにネットやマスコミを通じて,とにかく新名称を発表したがる場合があります.そのときに,複数の人が別々の場で別の名前を公表して,それぞれ自分が発見者だ! と言っていては混乱するわけです.マンタ(オニイトマキエイ)として知られていた大型のエイが2種いることが判明した際に,ナンヨウマンタとリーフオニイトマキエイという名前が別々に提唱されていることなどは,そうした例です.
(それにしても,なんでリーフマンタとかナンヨウオニイトマキエイとかにしなかったんでしょう? あえて和語と洋語を混ぜるのだなぁ,と「マングローブゴマハゼ」とか言う和名をつけた自分が言ってみるw)
 
 
 また,インターネットや学会発表のみで「和名」を発表して先取権を主張するのも問題があります.その「和名」の対象となる生物が,実際は複数種を含んでいたことが判明したときなどに,厳密な記載と基準となる標本の指定がなければ,その「和名」が複数種のどれに該当するのかが特定できなくなります.
 
 ですから,標準和名も学名の運用に準じた形で,基準となる標本を指定した上で記載論文を適切な媒体(学会誌か専門的な学術書籍)で出版した時点で使用する,ということにしましょう,という話です.
 
 もちろん,人の口には戸が立てられない,というように,インターネットなどで自分の好きな名称を自由に使うことはかまわないのですが(というか,制限のしようがない),研究機関や水族館,博物館に所属する人(=学術的な発言に社会的責任の伴う人)の生物名の使用においては,充分に留意する必要があるということです.
 
 
 また,そうした研究者が留意することとして,他の人がつけた名称の使用だけでなく,自分自身がおこなう命名行為に対するモラルも必要です.
 
 つまり,

・学会発表の時点で新標準和名の提唱・使用はしない
・論文が印刷されて出版されるまでは和名を使わない,マスコミやネットで流布しない(受理の時点ではダメ)

ということです.

 学会発表だけして論文をいつまでも書かないのは論外としても(…書いてて自分が傷つくなぁ),もしも複数の名称が別々の学会誌に公表された際に,泥仕合をせずに一つの基準で標準和名を選択できるようにしましょう,ということです.
 
 功名心は,学問を進めるモチベーションとして重要ですが,研究者として重要なのは,個人の名誉ではなく,社会的な貢献なのだから,一刻も早く言いたくても我慢しましょう.というか,ボクも我慢してますsweat01

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