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2011.05.26

魚類学雑誌58巻1号

先日届いた魚類学雑誌,なかなか読み応えのある論文が多かったです.
個人的に興味を惹いたものをいくつかチョイス.
 
 
・伊豆半島南部の稲生沢川水系における魚類の流程分布.(pp.13-25)
 
 河川の魚類調査として「やれることは全てやった」といえるお手本的な論文.すばらしい.
 科学的に新しいことを何か開拓できたわけではないかもしれませんが,各地域の生物の分布と環境をしっかり記録しておくのは,今後の保全生態学や応用生態工学のような,自然を守り,あるいは復元する分野に必ず役立ちます.
 
 
・吉野川分水による吉野川水系から大和川水系へのカワムツの移入.(pp.65-74)
 
 導水事業による河川間の遺伝的攪乱に関する研究.こうした事実がわかったからといって,何が出来るというものでもないのですが,それでも自然の姿が,どのように変容していくのか,というプロセスを知れば,本来の日本列島の自然がどのようなものだったのかを知ることにつながるはず,と思いたいです.
 
 
・市販されているメダカのミトコンドリアDNA遺伝子構成.(pp.81-86)
 
 10年余り前にメダカが「絶滅危惧種」とされてから,観賞魚店ではクロメダカがプレミア価格で売られるようになった気がするのですが,そのクロメダカはどこかの野生個体群から採集されたものではなく,ヒメダカ養殖の中で「体色が黒いヒメダカ」を集めたものというオドロキの事実.
 他にも,メダカの流通に踏み込んだ内容なので,「メダカの放流」対策を考える上で必読です.

 
・日本の希少魚類の現状と課題.(pp.99-107)
 
 今回は海水魚レッドリスト検討のための予備調査の結果と,アオギスの話.
 海水魚のレッドリスト作成は,個々の魚種についての情報が無いので難しいですよね…
 アオギスについては,周防灘の個体群が比較的安定した状態らしい,ということなのは良いのですが,それでも限られたエリアですし,中津干潟が潰されたら終わってしまうような気もして,不安は残ります.それと,すでに絶滅した可能性の高い海域の中で,伊勢湾だけろくな記録が無いというのが,なんとも……三重県や愛知県の沿岸環境への関心は,どうなってるんでしょうね? (まぁ,「県の魚」がそれぞれイセエビとクルマエビですからねsweat01 あんまり魚類には興味の無い県民性なのか?)
 
 
・高木和徳先生の思い出.(pp.118-119)
 
 ハゼ神様の一人だった高木先生がお亡くなりになっていたことを,この記事を見るまで知りませんでした…
 3年ほど前のゴリ研究会までは参加されていたかな.ボクは目上の方とお話しするのが苦手なので,あまりお話しする機会は多くはなかったのですが,それでもゴリ研究会ではしばしばお会いしましたし,柔和な感じの先生でした.(でも,きっと若い頃は切れ者だったのだろうな,という部分も)
 ご冥福をお祈りします.
 
 
・Ichthyological Research-現状と論文投稿へのお願い.(pp.119-125)
 
 「これから論文を投稿する若者のために」とタイトルを変えても違和感の無い記事.
 大学院生などが論文を書いて投稿するときに,論文の内容とは別に直面するのが学術誌の査読システムで,指導教員が懇切丁寧に教えてくれればいいのですが,そうでなければ無作法でいろいろ迷惑をかけてしまいます.論文を投稿する人は,まずは原稿を完成させた後,これを読んでから投稿しませう.
 最後のIRへの投稿の勧めについては,まぁ,わかるんですけどね… せめてカラー代を安くしてください…

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