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2011.01.10

読書感想文×5

2

ウサギ年に合わせてウルク装備のアイルーをたくさん描いてみました♪
 
 
 さて,ゲームばっかりしてるわけではなく,この年末年始に少しは本も読んでおりましたので,ちょっとした感想文でも残しておきます.


◆遊遊さかな事典 六十六の釣魚物語とさかな用語集.小西英人著.株式会社エンターブレイン.

 秋頃から少しずつ読んでいたのですが,かなり高密度なエッセイがたっぷり詰まっているので,読み終わるまでずいぶん時間がかかりました.それぞれの魚のエッセイも素晴らしい内容で,釣り場での臨場感,新たな研究成果を知ったときの高揚感などがひしひしと伝わってきます.巻末の用語集も秀逸だったので,用語集まで全部読んでしまいましたよ.
 
 若干の数字のミスなどが散見されるのが難点ですが(例えばメバル百年論争として研究史を語る中で「1933年に中坊が…」などと書かれていると,さすがに混乱します 苦笑),自然に親しむということと分類学のおもしろさが伝わる良書です.
 
 
◆ダーウィン『種の起源』を読む.北村雄一著.化学同人.

 ゼミの2年生の勉強用の題材に使ったのですが,オリジナルの『種の起源』を読まなくても読んだ気になれる素晴らしい本でした.本当にエッセンスをうまく解説してくれています.ダーウィンが「種の起源」を書いた当時の科学的知識などを踏まえて,現代的な知識でその内容を補う説明は「生物進化」に関する優れたテキストになってます.ただし,どこまでがダーウィンの書いたことで,どこからが北村さんの考えか判然としない部分が少しあったりするのは,少し欠点かもしれません.
 
 
◆博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか?  榎木英介著.株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン.

 ポスドク問題を扱った本で,わかりやすく読みやすいです.かつてのオーバードクター問題については,よく知らなかったので勉強になりました.大学におけるバイオサイエンスの隆盛と産業規模の小ささのギャップなども考えたことがなかったので,なるほどと思いましたし.
 
 しかし,ポスドク問題といっても分野によって事情が大きく異なるので,やはり多くの人が満足できる解決は難しいですね.著者の榎木さんはなるべく前向きに検討されていますが,なかなかね… 市民社会の中で「博士」の能力が活かされるようになれば,という期待も書かれてますが,現在のサイエンスカフェなどの集客力の規模から考えると,アカデミックポストに就いていない博士がメシを食えるような,科学と社会をつなぐ生業があるとは思えないですし.いろいろ難しいですね.まっとうなサイエンスライターでは飯は食えない,ということは上述のダーウィン本の北村さんも書いてますし.
 
  
Wolfe-Simon et al. (2010) A bacterium that can grow by using arsenic instead of phosphorus. Sciencexpress, DOI: 10.1126/science.1197258

NASAがもったいぶって公表した「宇宙生物学上の発見」の論文.せっかくなので読んでみたけど……
 
リンとヒ素をほとんど含まない培地では増殖しないが,ヒ素を加えれば増殖できる(ただし,リンを加えた方がより増殖する).フェノール抽出の核酸分画にヒ素が含まれている.ヒ素+/リン-で培養した菌から抽出したDNA/RNAのアガロース電気泳動のバンドに含まれるヒ素の量が,ヒ素-/リン+で培養した菌のバンドよりも少し多くのヒ素を含んでいる.などといった実験内容です.
 
DNAのリンがヒ素になっている,と言いたいんだろうなぁ,とは思いつつも,リン-の条件でも完全にリンが除去できているわけではないし,直接的な証拠が何も得られていないので,これじゃあ細胞内のリン(タンパク質のリン酸化とかATPとかに使う分)がある程度ヒ素で代替されてるかもね,というくらいしか言えないなぁ…と思って最後まで読んでみると,論文の結びも「elemental composition of its basic biomolecules by substituting As for P.」ということで,どこにもDNAのリンがヒ素に置き換わっているとは書かれていないのでした.
 
もしかしたら,この細菌の発見に関する競争相手がいて,不十分な実験結果であってもNASAが先に「印象に残る形で」公表したかったのかもしれません.NASAの公表予告で「すわ地球外生命の発見か?!」という世間の期待が裏切られたのは別に大したこととは思わないんですが,この論文の内容こそ期待はずれでした.がっかり.


◆大奥 (現在1~6巻まで).よしながふみ著.ジェッツコミックス,白泉社

 マンガですが,これはおもしろかった!!
 
 将軍が女性で,大奥に美男が集められて…という男女逆転の話ということは聞いていたし,映画にもなっていたので,単なる適当な男女の逆転の妙を楽しむ作品かと思ったら,全然違ってました.1巻は導入として,すでに男女の役割が逆転した社会のできごととして大奥入りする町人の男の話から始まるのですが,その後に,なぜそのような社会が形成されたのかというプロセスが丹念に描かれます.

 若い男児が発病して高確率で死亡する伝染病の流行によって江戸幕府成立後の男女比が急速に変化していく中,戦国乱世を生き抜いた春日局らが,ようやく訪れた平和な世の中を維持するために社会的混乱を最小限に押しとどめようとした結果……ということになるのですが,奇病の流行による男女比の急激な変化という仮定を一つおいただけで,あとは緻密な社会シミュレーションとなっています.その意味では,非常に優れたSFだと言えるでしょう.本来なら,そうした状況で史実とは全くかけ離れた社会へと変化していくように思えるのですが,反徳川大名の取り潰し,鎖国,田畑永代売買禁止令,生類憐みの令などなどの出来事が,男性が減少した中での体制維持のための努力の結果として実に自然に生じてきます.また,そうした中で生きる登場人物たちのドラマが素晴らしい.

 この何年かに読んだマンガや小説あるいは映画などの中では傑出した作品です.これはすごいです.
 

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