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2009.12.14

「淡水魚類地理の自然史」

ボクが9章と11章を担当した「淡水魚類地理の自然史」が刊行されます!
 
 
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↑今日届いたばかりの見本.
 
 
 やはり本が刊行されると嬉しいですhappy02

 書店への配本がいつになるのか聞いてませんが,奥附に「2010年1月25日 第1刷発行」と書かれてますから,興味のある方々がいらっしゃったとしても,あと一月ぐらい待っていただくことになるのかな?

 せっかくなので目次を記しておきます.
 
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淡水魚類地理の自然史 【多様性と分化をめぐって】
渡辺勝敏・高橋 洋編著 北海道大学出版会 283pp. 定価(本体¥3000円+税)

<目次>

はじめに

第I部 淡水魚類地理へのアプローチ

第1章 日本産淡水魚類の分布とその研究史(渡辺勝敏)
 1. 淡水魚,生物地理,そして日本列島
 2.日本産淡水魚類の生物地理研究
   第1期-生物地理区研究
   第2期-分類体系にもとづく階層的魚類相比較
   第3期-系統をベースにした歴史生物地理/第4期に向けて

第2章 日本列島の成立と古環境(北村晃寿)
 1.日本列島の地形の変化
 2.氷期-間氷期サイクルの出現前の気候変動
 3.氷期-間氷期サイクルの出現時の気候変動
 4.日本海南方海峡の変遷史
 5.「準平原の卓越時代」から「大扇状地時代」へ

第3章 系統地理学の方法論(高橋 洋)
 1.系統地理学とは?
 2.系統地理パターンを捉える
   地理的集団サンプリング/遺伝子系統推定法
 3.地理的集団構造の解析法 - 分子分散分析(AMOVA)
 4.合祖理論と過去の集団サイズの変動
 5.階層クレード系統地理分析
   階層クレード分析の分析手順/階層クレード分析に関する議論
 6.展望,複数種,複数遺伝子座への拡張

第II部 淡水魚類の分布域パターン形成

第4章 冷帯性淡水魚類の系統地理(横山良太)
 1.冷帯性淡水魚類とは?
 2.冷帯性淡水魚類の系統地理学
 3.ハナカジカの系統地理
   ハナカジカとは?
   種内系統とその分布パターン
   分化年代
   ハナカジカの分布域形成史
 4.トミヨ属淡水型の鱗板列2型の系統地理 - 2度の分散仮説
   トミヨ属淡水型の鱗板列形態の多型
   種内系統とその地理的分布
   鱗板列形態の分布と種内系統の関係
   分布域形成史と鱗板列形態の進化 - 2度の分散仮説
 5.スナヤツメの系統地理 - 見分けのつかない2種の歴史
   スナヤツメにおける隠蔽種の発見
   スナヤツメ隠蔽種群の系統地理
 6.日本の冷帯性淡水魚類の系統地理

第5章 サケ科魚類の遺伝構造とその成立過程 - 陸封化と大規模回遊(佐藤俊平・山本祥一郎)
 1.イワナ
   mtDNAを用いたイワナの系統地理
   イワナ4亜種の地理的分布とハプロタイプの関係
 2.サケ
   mtDNAを用いた系統地理
   環太平洋サケ集団の遺伝構造の成立過程
   遺伝構造やその形成過程が異なる要因

第6章 温帯性淡水魚類の成立 - シマドジョウ類を中心として(北川忠生)
 1.シマドジョウ類とは?
 2.シマドジョウ類の生物地理
 3.シマドジョウの系統地理
 4.日本産シマドジョウ類の系統類縁関係
 5.日本産シマドジョウ類全体の系統地理学的パターン
 6.ユーラシア大陸産近縁種との類縁関係
 7.ほかの温帯性淡水魚類の系統地理

第7章 メダカの高精度系統地理マップをつくる(竹花佑介)
 1.メダカ属の系統と分布
 2.アロザイムによるメダカの集団構造解析
 3.mtDNAによるメダカの系統地理解析
   系統A/系統B/系統C/系統D/系統E
 4.メダカの分布域形成史
 5.今後の展開

第8章 アユの遺伝的集団構造に残された謎(武島弘彦)
 1.アユの集団構造解析におけるmtDNAの有用性
 2.PCRで追跡できた放流琵琶湖産アユのゆくえ
 3.両側回遊性アユの集団構造

第III部 種を越えた系統地理

第9章 種間交雑をともなう系統地理 - 種の実体と分布域形成(向井貴彦・高橋 洋)
 1.遠くて近い系統
 2.ゴースト/分布変遷の残像
 3.極端な遺伝子浸透の実例1 - チチブ類とトゲウオ類
 4.極端な遺伝子浸透の実例2 - ヨシノボリ類
 5.浸透しやすいmtDNA
 6.系統地理との関連
 7.核DNAの遺伝子浸透

第10章 単性生殖をともなう分布域形成 - ギンブナの多様化の歴史(大原健一)
 1.単性生殖種とは?
 2.ギンブナの生殖機構
 3.ギンブナと二倍体種との関係
 4.ギンブナの地理的変異
 5.ギンブナの起源
 6.ギンブナのクローン集団
 7.ギンブナのクローン集団の地域間比較
 8.多様なクローンの起源
 9.ギンブナ集団の維持機構

第IV部 淡水魚類相の総合的理解に向けて

第11章 比較系統地理学から見た琉球列島の淡水魚類相の成立(向井貴彦)
 1.川と干潟のさかなといえば……ハゼ類でしょう!
 2.系統地理パターンの比較
   トカラギャップにおける系統分化(2種群)
   一部地域におけるmtDNA系統の分布重複(2種群)
   九州以北と琉球列島の間の浅い系統分化(2種と1種群)
   慶良間ギャップにおける系統分化(1種)
   遺伝的分化のみられない種(3種)
 3.隔離年代の比較
 4.複数種の比較でみえてくるもの

第12章 新生代淡水魚類化石からみる日本列島の淡水魚類相の変遷(渡辺勝敏)
 1.古生物・化石情報の重要性
   系統推定
   系統の出現・分岐年代
   形質の進化時期
   分布域の変遷
   古群集・生態系の推定
   マクロ生態学的仮説の検証
 2.日本列島の新生代淡水魚類化石と魚類相の変遷
   古第三紀
   新第三紀中新世
   第三紀鮮新世〜第四紀更新世〜完新世
 3.化石情報と系統地理研究
   化石記録の問題点と意義
   化石による進化シナリオの検証
   化石記録のさらなる利用に向けて

第13章 身近な魚の居場所を拓く生態プロセス(井口恵一朗・淀 太我)
 1.「いる/いない」の多重スケール - 回遊魚アユの場合
 2.人の手が加わった自然 - 水田のすみ場所機能評価
 3.勝ち組エイリアン - 連れてこられたバス類のゆくえ
 4.すみ場の将来を測る - 今後に期待される課題

第14章 日本の淡水魚類相とその成立過程のより深い理解に向けて(渡辺勝敏・高橋 洋)
 1.日本の純淡水魚類相の構造と時間的枠組み
 2.取り組むべき課題
   単一種の系統地理から網羅的比較系統地理へ
   6つの課題
 3.生物地理情報の攪乱と生物多様性保全

引用・参考文献
索引
 
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 ちなみに,このような研究の方向性は,実に100年以上前から求められていました…


動物の分散と分布の研究においては,それを左右する物理的な条件や,多かれ少なかれ見られる動植物相の遷移に着目することが重要である.ちょうど柔らかい物を型にはめるように,その地域の動物相はその生息環境に適応していく.その地域の動物のリストを作ることが動物相研究の目的だった時代は過ぎ去った.これからは比較研究だけでなく,遺伝学も必要である.また,動物の生息環境の研究に多くの力を割かねばならない.このことは生息環境を静的で柔軟性を欠くものとしてとらえるのではなく,変動し,または周期性を持つ媒体として考えなければならないことを意味している.
    --------Charles Adams, 1901

(訳文は,ジョン・C・エイビス著,西田睦・武藤文人監訳「生物系統地理学」より引用)
 
 
 DNAが遺伝物質であることがアベリーの実験で示されたのは1944年,ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造のモデル発見が1953年なので,1901年にしてこの慧眼おそるべし…
 
 
 
(ちなみに,上のアダムスの文章の翻訳はボクが担当.読みにくかったらスイマセン)

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