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2009.12.27

分子進化速度

「淡水魚類地理の自然史」を読み終えました.おもしろいのだけれど,情報が増えて混迷が深まった…って感じかな? やはり時間軸をしっかりさせるのは,今後の課題として重要ですね.

 ちなみに,今年公表された論文で推定されていたメダカの南北集団の分岐が1800万年に遡るというのが,もし正しかったとしたら,それで他の魚類の系統地理も説明がつくのか…ということを考えつつ,各章を読んでみたのですが,たしかになんとなく当てはまるような感じもするし,無理が出てくるような感じもするし…結局,東西日本の淡水魚の遺伝的分化を考えたときに,速い進化速度を使えばフォッサマグナで説明できるし,遅い速度を使えば多島海で説明できてしまうので,どちらかが致命的な矛盾を示さない限りは,よく分からないですね.

 ただし,Harada et al. (2002)で比較的遅い進化速度と速い進化速度で琵琶湖固有のイサザの起源を検討して,2%/100万年よりも速い進化速度でなければ,イサザの起源があまりにも古くなる(琵琶湖固有種なのに,古琵琶湖が影も形もない時代に起源が遡ることになる)ということを議論してるのは,妥当な気がします.それに,メダカの南北集団の塩基配列差異が約1800万年だとすると,兵庫県北部のハイブリッド集団固有のmtDNAの起源は1000万年くらいになるんですよね….南北メダカという2つしか考えなければ,日本列島が形成され始めた時期でもなんでも説明がつきますが,細かな地域集団を考えれば,やはり無理があるような….

 しかし,速い進化速度ならなんでも良いかというと,そういうわけでもなかったりします.たとえば,Orti et al. (1994)のイトヨのデータを元にしたCyt b遺伝子の2.8%/100万年は,イトヨとトミヨの分岐が約1000万年ということを基準に計算されてましたが,明らかにイトヨと同定できる化石が約1300万年前のカリフォルニアの地層から見つかったので(Bell et al., 2009),もっと遅い進化速度に修正される必要があります.ボクがオガサワラヨシノボリで試算したND5遺伝子のK2P距離3.8%/100万年も,もしかしたらオガサワラの姉妹種のmtDNAが別の種からの遺伝子浸透で失われていたら,大きく外れてしまっている可能性があります.(むしろ,最近論文にした小笠原のスジクモハゼと他地域の間のND5の塩基配列差異4.17-4.83%を,小笠原諸島の陸化時期である180万年に合わせると,ちょうどよい?)

 結局,自力で解決できるように努力するしかないかな.
 
 
 それと,内容とはあんまり関係ないことですが,年齢を重ねた人は文章に味が出るなぁ,ということを,あらためて思ったりしました.(ボク自身の文章は,10年前の「魚の自然史」の時よりは,多少巧くなってるとは思いますけど… あぁ,もっと上手な文章が書きたい)

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