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2009.07.21

分岐年代の推定2

先日メダカの分岐年代推定は間違っているのではないか? ということを書いたわけですが,あの説明だけでは本当は不十分なのは重々承知なんですよね.系統樹を使って較正点を複数置くことのメリットはちゃんとあって,下のような較正点の配置があれば,古い較正点でも短い時間あたりの進化速度が推定できることになっているんだと思います.
 
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 しかし,この場合の分岐点と分岐点の間の時間が,仮に判明していたとしても,その間の塩基置換の量を正確に推定するのは難しいと思うわけです.

 また性懲りもなく,10年以上前に距離法とか最尤法とかの議論がなされていた頃のような図を書いてみます.
 
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 この場合,一定のペースで塩基置換が蓄積し続けていった場合が緑色の直線.実際に観察されるのが青色の曲線です.

 一定のペースで塩基置換が蓄積できないのは自明であって,機能的な遺伝子であれば,その機能を維持する上で変化できない部分があるから,種間でどれほど違っても数十%程度の違いしか生じません.全く機能がなかったとしても,塩基はGATCの4種類しかありませんから,ランダムな配列を比べても1/4くらいは一致するので100%違う塩基配列というのはありません.
 しかし,1%/100万年で塩基置換が蓄積していったとすると,1億年で100%違うことになってしまうし,2億年で200%違うことになってしまいます(図の緑直線).そんなことはありえないので,塩基置換の数は早々に頭打ちになります(図の青曲線).

 したがって,例えば8000万年前の分岐点と9000万年前の分岐点の間の塩基置換数は,実際に観察される量としては,本来生じる塩基置換数よりもはるかに少なくなります(上図参照).その差を埋めるために,複雑な塩基置換モデルを用いて最尤推定をおこなうのですが,その時に,古い較正点だけでは不十分ではないのか,と思うわけです.
 
 
 それにしても,こういう分岐年代推定の良し悪しを,もっと理論面から適切に議論できると良いのですが,Theoreticalな研究は苦手なんですよね…
 
 ということで,Empirical研究者としては,古い時代しかない化石に頼らずに,説得力のある地形変化とかのイベントを利用して種内系統地理の年代較正点が得られないかなぁ,と考え中.

 オガサワラヨシノボリのmtDNAが他地域から隔離されたのは,小笠原諸島が陸化して淡水魚が生息できるようになって以降だろうというのは,それなりに良い較正点だと思うんですけどね.推定される分子進化速度が,かなり早くなるけれど,多重置換が蓄積し始めるまでの進化速度は,早くても変じゃないと思いますし.他にも,もうあと数点の較正点があればなぁ…
 
 
 ちなみに,メダカの話でもう一つ.

 日本列島の形成とかに関しては,生物の地理的分断が生じそうなイベントはたくさんあります.だから,どんな年代推定であっても,大抵は説明可能なイベントが出てきます.それゆえに,よーく考えて議論しなければいけないと思うのですよ,ボクは.

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