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2007.08.17

最近読んだ本

先日,東京に行ったときに往復で読んだ本について,ちょっとだけ感想を書いてみます.

遺伝子で探る人類史
 人類の起源についての分子系統・分子生態学的な知見をわかりやすくまとめた本.
 類人猿との関係や現生人類のアフリカ起原説についての説明は,分子系統学の発展の歴史を概観するような形になってます.著者は,現生人類のアフリカ単一起原説について,現在流布している考え方(約20万年前にアフリカから世界に広がった現生人類が,それ以前の人類と全く交雑せずに置き換わった)に対して批判的ですが,かなり丁寧かつ慎重に議論しているので説得力があるように思えます.
 現代人の地域差についての記述も,なかなかおもしろいのですが,ヨーロッパ人の複数遺伝子座の対立遺伝子頻度に基づく主成分分析の結果なんかは,あまりにも都合良くできすぎていて,元論文を見ないと信じがたいかも・・・
 ちなみに,しばらくまえに「イヴの7人の娘たち」という本の文庫版も読んだのですが,「イヴ」は自説をがっつり主張するいかにも欧米の研究者的な本なのに対して,「人類史」の方はすごく慎重で総合的に判断しようとしている感じです.

知られざる日本の恐竜文化
 これは・・・大いなる愚痴か?
 恐竜ビジネスの悪い面がたっぷり書かれているので,恐竜学以外の部分はとても興味深い内容です.ただ,研究そのものについての著者の感覚や未来像は,ちょっと違うなぁ,と思わずにはいられません.その辺は非研究者である著者の限界というところでしょうか.
 しかし, オタク話は,とても楽しめました♪ アメリカ古脊椎動物学会がコスプレイヤーの跋扈するコミケ化しているというのも,びっくりですけど,実学から遠いからこそ楽しめるというのは理解できるかも.

東京湾 魚の自然誌
 まじめな良書ですね.ネットを曳いて採れた仔稚魚を徹底的に調べていけば,総合的にその地域の海のことが見えてくるということが,よくわかります.学会発表や個別の論文を見ていたのでは全体像が見えてこないので,こうした本で,わかりやすく東京湾の仔稚魚研究のこれまでの成果と,目指すところを見せてもらえると,とてもおもしろいし,勉強になります.

■野性伝説1〜7
 戸川幸夫さん原作の矢口高雄さんのマンガですが,このシリーズの1〜3巻の「羆風」はトラウマ級の怖さです.以前,雑誌連載の時に,たまたま一番恐ろしい部分を読んだことがあって,久しぶりに読みたかったのですがアマゾンでは羆風の下巻が品切れだったので,東京の某大型書店で買った次第です.
 文庫サイズでは怖さも減少しますが,北海道開拓時代の最大のヒグマ被害の実話を描いた作品として,人間と野生動物との関係を考えたい人は必読かと.
 ただ,続けて4巻以降の他の話も読むと,矢口マンガは手塚マンガのようなアクター方式なので(ようするに同じキャラクターが,別の話でも他の役柄として出てくる),「羆風」で狂気にとらわれそうなほどの悲劇にあった人たちが,ほのぼのと出てきて,すごく違和感があるので,続けて全巻読破するのはオススメできません.

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