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2006.03.27

理科系の作文技術

今所属している学部はいわゆる“文理融合”の学部なんですが,実質的な融合はやはり難しいものがあって,個人的には文理混合だと思ってたりします.新学部を創設する際に文理融合を標榜するのは,文科省にもウケが悪いようなことを聞いたことがあるので,融合が難しいのは皆が認めているのでしょう.

 とはいえ,理学部育ちの自分にとって,異分野の人と職場を同じくして話をするのはおもしろいものです.考えてみれば,大学生のときには,大学寮でいろんな学部の友人と共に暮らした経験もあるので,自身が昔も似たような環境にいたのだといえるかもしれませんが.

 さて,文理混合の職場で仕事をするといっても,普段は完全に教員ごとの独立営業なので,なかなか同僚の方々と話をすることもありません.しかし,たまたま話をする機会から感じたのは,「文系」「理系」という区分の無意味さでした.

 結局,事実なり真実なりを探求するのであれば,証拠に基づく合理的な思考が重要なのであって,そうした思考を基礎におくのは一般に「文系」と呼ばれる分野にも普遍的にあるということを感じたわけです.もちろん,事実よりも意見や思想に重きを置く人たちもいるとは思うのですが,それは「文系」の中の部分集合,もしくは文理を問わず誤った方向に行ってしまった人たちのようです.

 上記の話は,後々の伏線だったりするのですが,とりあえず今回は「理科系の作文技術」の話です.この本は,ぼくが大学1年生のときに実習のレポート作成の基本として読むように先生(*)から薦められたものです.すでに刊行から25年が経つもので,ぼくが最初に読んでからでさえ,すでに15年が過ぎています.

 なぜ,今この本の話なのかというと,ぼくの所属する学部で学生にライティングを学ばせる機会がほとんどないことに最近気づいたからです.自分自身もライティングを授業で習ったことはないのですが,理学部の実習は毎回レポート提出が必要だったし,大学院以降は論文執筆や公募申請で実戦的に鍛えられてきたわけです.そうした鍛錬の基礎にあるのが,大学でレポート作成のために最初に薦められた本にあると思ったので,今の学生たちに薦めるに値するのか,また,自身の作文技術をあらためて見直すために必要な部分は無いか,そんなことを考えて15年ぶりに読み返してみました.

 今から読んでみると,すでに体得できている技術もあれば,あらためて身に付けるべき部分もあって興味深かったのですが,タイトルの「理科系」は不要ですね.〈他人にわかるように文章を書く〉,〈決して違う意味に取られないように書く〉,〈事実と意見を区別して書く〉といった技術は,分野を問わずに必要なものだと思えます.かつて理学部および理学系の大学院・研究所にいたときには,「理科系の」という言葉に何の疑問も持たなかったのですが,今となっては,そのように対象を限定すべきではないと実感しています.

 そして,特に重要なのは「事実と意見の区別」です.

 ライティングの技術として重要なのは言うまでもありませんが,どこまでが事実なのか意識しながら文章を書くことで,ものごとを判断するための思考力自体が養われるのではないか,と個人的な経験から思うわけです.アマゾンの書評でも,この部分を重視するコメントが書かれていますが,大学生のときに事実と意見を区別して考える/表現する訓練を受けるのは大事でしょうね.

 さらに言うならば,本来は大学ではなく小学校の作文の教え方から直すべきと思います.「理科系の作文技術」の最初の方で,米国等における初等教育のライティングの話が出てきますが,結構衝撃的です.米国式ライティング教育と比較すれば,日本では「事実」を軽んじるように子供のときから訓練されてきているように見えます.

 社会問題に関わると,そういう部分でいろいろと苛立ちを感じることもあるのですが・・・

(*)「理科系の作文技術」を薦めてくださったのは当時,静岡大学理学部生物学科におられた江川先生(←フルネームが思い出せない・・・,あぁ,申し訳ない).微生物学が専門だったはずなのに川での生物採集や解剖学などの基礎生物学の実習を担当してくださっていました.他にも,先日退官された石川勝利先生の「(試薬ビンを)スケッチしましょう」や「水にもいろいろある」という名指導は素晴らしかったです.

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