« April 2004 | Main | July 2004 »

May 2004

2004.05.03

特定生物による生態影響

生物科学52巻1号(2000年6月) 「特集 特定生物による生態影響」より

浜田篤信:外来魚類による生態影響―霞ヶ浦はなぜ外来魚に占拠されたか


 いつもながら情報の遅いblogなのだが,今更ながら2000年の論文の紹介.

 論文の内容としては,霞ヶ浦での主要魚種の漁獲量の変化と環境変化を元に,外来魚が増加した要因などを考察している.基本的なアイデアは,ヨシ帯の消失と直立コンクリート護岸によって沿岸の波浪が変化し,底質が変化したことで,在来魚種が減少し,その結果として外来魚が増加することになったとの推測である.ハゼ類(ウキゴリ・ジュズカケハゼ・アシシロハゼ)の減少要因を底質の変化による産卵床の消失としているのは間違いだと思うが(アシシロハゼは淡水化の影響が大きいかもしれないし,ウキゴリは同様な産卵基質を使うヌマチチブが増加しているので産卵床がないわけではないはず),一考に値する内容ではある.

 また,文献的に霞ヶ浦に食糧増産目的で放流された国産魚が挙げられている.この論文中に書かれている国産の放流魚は次の通り.()内は放流された記録のある年

ヒガイ(1918)
ホンモロコ(1936)
タモロコ(1951)
スゴモロコ(1990)
ツチフキ(1960)
ゼゼラ(1960頃)
ハス(1962)
ワタカ(1960)
ゲンゴロウブナ(1930)

 そう,関東に見られる琵琶湖由来とされるかなりの魚種が,それ自体を移植対象として放流されていたわけである.関東地方などで見られる琵琶湖由来の魚種について,明らかにアユとは生息域が違うのに「アユ種苗への混入」という説明がされていることに不信感を感じていたのだが,公式な記録にあるだけでもこれだけの魚種が放流されてきており,非公式な個人レベルでの移植なども考慮すれば,琵琶湖産アユ放流による魚類の分布攪乱の影響は,過大評価であると考えてもいいのではないだろうか.

 もちろん,「過大評価」だとしても琵琶湖産アユの放流に問題があるのは確かなので(生息域の共通する魚種の混入,冷水病などの蔓延),放流そのものに賛成するつもりは無いが,国内移入魚の由来について安易にアユのせいにするのは控えるべきだろう.

以下,蛇足だが若干の推論.

 ウェブサイト「都会の水辺」に首都圏で採集された国内移入魚が14種載っているが,その中から上記の放流魚を除くと,残りは8種.(ヌマムツ・カワムツ・タカハヤ・ムギツク・イトモロコ・カネヒラ・オヤニラミ・ドンコ )

 この8種中,ドンコの由来は瀬戸内地方西部であることをmtDNA分析で確認済み.タカハヤ・ムギツク・イトモロコ・オヤニラミは琵琶湖内にはほとんど生息しておらず,瀬戸内地方のドンコと同様の環境に多く生息しているので,関西のトリコがドンコなんかと一緒に採集して卸した観賞魚に由来するのかもしれない.カネヒラは二枚貝の移植に由来する可能性が大きいようである.そうすると,最終的にアユへの混入以外のルートが今のところ考慮できないのは14種中のカワムツ・ヌマムツだけである.このように考えると,琵琶湖水系に分布する淡水魚が関東地方で見つかったとしてもアユに随伴したと安易に決め付けるのは早計であり,やはり放流用アユ種苗の採集場所で同時に混獲されうる生態の魚種で,なおかつ移植前の蓄養中に生存し続ける種類でなければ,琵琶湖産アユ種苗への混入が全国への拡散の原因などとは言えないだろう.

| | TrackBack (0)

« April 2004 | Main | July 2004 »