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April 2004

2004.04.27

アオギスがいた海

アオギスがいた海(浦安市郷土博物館 平成13年度 第1回特別展図録)
アオギスがいた海(浦安市郷土博物館 調査報告 第1集)


 浦安市郷土博物館でかつておこなわれた特別展「アオギスがいた海」の図録と,その補追である調査報告というのが,浦安市郷土博物館で売られていることを知ったので買ってきた.

 アオギスについては,かねてより絶滅のおそれのある魚として知っていたのだが,週刊釣りサンデーの小西英人さんが書かれたすばらしいエッセイ(快投乱麻vol.27vol.96)を読んで以来,非常に興味を惹かれていたのである.

 もちろん,絶滅危惧種だから価値が高い,などと考えているわけではないのだが,おそらくは日本固有種であり清浄で広大な砂干潟が無いと生存できないアオギスは,すでに豊前海のみに生息し,いつ我々の前から消え去ってもおかしくない状態であることを考えると,せめてその姿を見ておきたいと思わずにいられないのである.(ちなみに鹿児島県には斑紋の少し違う個体群がいるらしいが)

 今回入手した図録と調査報告は,江戸前でのアオギス釣りの様子についての聞き取り調査を中心に,混乱していたアオギスを含む日本産キス属の分類が整理された経緯,自然海岸を守るための入浜権運動の中でアオギスを天然記念物にしようとしてできなかったことなどがまとめられている.

 この報告に目を通すと,かつての東京湾がいかに清浄で豊かであったかがわずかなりとも想像できるし,高度経済成長による東京湾の沿岸の破壊とアオギス釣りの衰退とがリンクしている様子もわかる.現在の東京湾しか知らない者としては,かつての東京湾の姿が,この本の中に記されているような環境だったなどと,信じられないくらいであるが,九州の豊前海に行けば少しでもそれに近い自然が見られるのだろうか?

 また,アオギスについては独特な釣り文化があったために資料も残り,かつての自然を想像させてくれるが,その頃の東京湾に,ほかにどのような魚種がいたのかはもはや知る術も無い.ある地域で一種の生物が消え去るということは,そこの生物群集を構成していた多くの生物種も共に消え去っているはずなのだが・・・

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