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2004.03.22

メダカとヨシ

メダカとヨシ—水辺の健康度をはかる生き物 現代日本生物誌
佐原 雄二 (著), 細見 正明 (著) 岩波書店 (本体\2000円+税)


 人に身近な水環境を代表する動植物であるメダカとヨシのそれぞれについて生態や生理の紹介された本.

 第一部がメダカの話で,青森県におけるメダカの生息環境の紹介から,年間を通じてのメダカの生態について述べられている.メダカは名前の知名度が高い一方で,自然の中での生態について詳しく調べた研究は意外と少ないため,淡水魚の一種としてのメダカの生活環を調査し,これまでの既存の研究と共に紹介してくれる本書は貴重な存在である.文章も読みやすく引用文献も記されているためアマチュアにも専門家にも役立つように思う.

 興味を惹かれたのは,一年の間でメダカが水路内を移動する行動に関する部分や,魚の体サイズの進化についての考察などである.メダカを題材とした淡水魚全般の進化学の導入になりうるし,佐原氏の視点はメダカのみならずその周辺環境に存在する水生昆虫や鳥類を含めた田園地帯の生態系全体に及んでいるので,自然観察者の視点として尊敬に値すると感じた.そうした視点から,近年おこなわれている安直なビオトープへの批判もなされている.

 また,日本での魚の飼育が近世以前から文化として広がっていた理由として,小型で飼育が容易なメダカの存在が重要だったという示唆は面白いと思う.ヨーロッパにおいては,そのような飼育に適した魚がいなかったので,淡水魚の飼育と品種改良はアジアでのみ発展してきたことは文化史としても面白いのかもしれない.

 また,街中の生息地におけるヒメダカの放流などの問題,ブラックバス類の放流の問題にも当然触れられている.

 第二部はヨシの話で,ヨシ原による水質浄化能力の話に力をおきながらも,ヨシの自然史についても紹介されている.どのようにしてヨシが地下茎に空気を送り込んでいるかなどの生理的な話はなかなかおもしろい.また,ヨシによる水質浄化作用のデータや,ヨシ原の面積と生息する動物の関係などについても具体的に紹介されており,ヨシ原の湿地生態系における重要さを具体的かつ簡潔に紹介している.琵琶湖における“ヨシ条例”についても紹介されており,滋賀県でのヨシ帯復元の取り組みがなされていることも記されている.

 ただ,ヨシの話の方は,植物に詳しくない立場からは,少し読みにくい印象もあった.もしかすると,魚に詳しくない人が読むとメダカの方が読みにくいかもしれないのだが,それでも,すぐに読める本であることに変わりはないので,気軽に読んで日本の水辺環境の現状の一端を知るには良いだろう.

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