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February 2004

2004.02.09

深海のパイロット

「深海のパイロット 六五○○mの海底に何を見たか」 藤崎慎吾・田代省三・藤岡換太郎著 光文社新書 315pp.


 まっとうな科学ドキュメンタリーで,しんかい2000,しんかい6500の開発経緯や活躍,その科学的成果などをわかりやすく描いている.書かれた動機が,JAMSTECの法人化による予算不足によって2002年11月11日を持ってしんかい2000の運航が無期限停止したのが,潜水調査船の挙げてきた成果や必要性のアピール不足と思われたためだと言うのが,なんともシビアで痛々しいが,同様の事態は今後の基礎研究の多くに降りかかるのである.

 内容的には,ぼくのような深海の素人(←東大海洋研にいたのにね(苦笑))には非常に勉強になったし,しんかい2000と6500のそれぞれの利点,欠点(2000の方は試作機的な役割があったので,総合的にはもちろん6500のほうが優れている),開発過程での問題点などの話もおもしろいし,海底の熱水噴出孔調査の工夫や,海外の潜水調査船との調査技術の競い合い,深海に沈められた漁具(かごなわ)にしんかい2000が引っかかってピンチに陥った話など,興味深いエピソードがいろいろである.

 小説などのフィクションで潜水艦ものはいろいろあるが,やはりノンフィクションもちゃんと押さえた上で,そうしたフィクションを楽しみたいものである.

 他にも,海底に大量にスーパーの袋が吹きだまっている様子などは,知らず知らずに地球上をすみずみまで汚していることがわかるので心苦しい.奇しくも今夜(2004/2/8)のテレビ番組「素敵な宇宙船地球号」(←この恥ずかしいタイトルさえなければ,いい番組だと思うんだけど)でレジ袋の問題を取り上げていたけれど,本当に何とかしなければいけないと思う.テレビではバングラディッシュでレジ袋のせいで洪水が増えた話をしていたけれど,日本のような急峻な地形では,地上よりも海底をいつの間にか汚しているわけで,もっと啓発していくべきことかもしれない.

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2004.02.02

外来種対策法

PORTAL2003年12月号 特集◎生物多様性と外来種問題

 特集としては二つの記事があり,一つは「新たな局面を迎えた外来種対策」という記事で,基本的には現在制定に向けて進められている外来種対策法に関して,これまでの経緯や基礎情報を紹介したもの.

 もう一つは,「六角川における在来種を用いた緑化の検討」として,佐賀県六角川において進められている在来植物種を用いた河川工事後の法面緑化に関する実験の紹介.植物に詳しくないものにとって,イマイチ詳細を理解するには読みにくい記事だが,河川緑化の今後の方向性のための基礎研究が進んでいることがわかる.また,シードバンクの利用可能性の検討などしているのは,動物にはない植物特有のことであるが,土壌中から過去の在来種を掘り起こして利用できるのは,動物を対象としているものにとってはうらやましい.
 河川敷の植物の保全・外来種問題について興味のある人は,鷲谷いずみ氏の「サクラソウの目」や「オオブタクサ,闘う」のような本を読むと参考になると思う.

 なお,佐賀県は保全に関してそれほど悪くない感性の土地柄のようで,六角川の河口にあるムツゴロウ王国を見物に行ったときに,たまたま解説してくださった方にいろいろ教えていただいた話では,韓国からもらってきたムツゴロウを放さなかったこととか,六角川河口堰が完成した後も,農業用水として利用できないし利用する必要もそれほどなかったので開放してあることとか,たまたまそれに関わった人やその時の知事の英断によるものとは思うのだが,在来種による緑化研究が同じ土地でおこなわれているのは,そうした自然保護意識の存在と無関係ではないのかもしれない.

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