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2004.01.03

サマー・ドッグ

「エスパー魔美」 藤子・F・不二雄 小学館コロコロ文庫 全6巻

 新年早々の書評がエスパー魔美かい! と思われるかもしれないが,藤子・F・不二雄先生のマンガの中でもかなりの傑作で,よくこれだけいろいろな人や職業についての知識があるもんだと,あらためて藤子・F・不二雄先生の引き出しの豊富さに感心するほどである.各話毎に簡潔にして要点を得たエピソードになっているのだが,藤子・F・不二雄先生の自然や科学,歴史への関心の深さから,ナチュラルヒストリー的な題材を扱った話もいくつかある.

■サマー・ドッグ(文庫版4巻に収録)
 別荘地で夏の間だけ飼われて捨てられた犬たちの話.主人公の魔美たちが貸別荘に遊びに行って野犬の群れとなった捨て犬たちに襲われる話だが,無責任な動物飼育と放逐の問題が重く心に残る.ドラえもんにも捨て猫や捨て犬を扱った作品は何本かあるが(「のら犬イチの国」など),そちらのようなファンタジー的解決はこの話には存在しない.小中学校の道徳の教材に本気で薦めたい逸品.

■ドキドキ土器(文庫版5巻に収録)
 縄文土器の中に種もみがあったことから,縄文中期から既に農耕がおこなわれていたのではないかと考えて地元の丘陵地の独力調査をしていた老人と一緒に,問題の土地が工事される前に少しでも発掘してみようとする話.もしかして,これは,と思わせる証拠を得つつも,いきなり結論に飛躍せず,対立仮説を提示して検証していこうとするところや,最終的に魔美の超能力で,植物の種子が詰まった土器を発掘しつつも,それが実は・・・というところなど,良質なSF.藤子・F・不二雄先生が科学的思考法を持っていたことがよくわかる.

■彗星おばさん(文庫版6巻に収録)
 新しい彗星を見つけると発見した人の名前が付くのだが,そのために新彗星の発見を目指す人をコメットハンターというらしい.この話は亡くなった天文マニアの御主人のために新彗星を探すおばさんと,天文マニアを狙った詐欺師の話.天文マニアの世界のロマンチックな部分と人間くさい部分がうまく描かれてると思う.

 とりあえず,自然・科学関係のものを3つほど紹介してみたが,他の話も実にすばらしいし,大人の読書にも充分耐えうると思う.それに,なによりも主人公のボーイフレンドの高畑君が,博識で頭脳明晰で,それでいてどっか抜けたところもあって,理系男児かくあるべし! という感じの理想的な理系少年なのが,またなんともいいのである.

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